糖尿病の歴史
糖尿病(第7章)

トップ > 糖尿病 > 第7章 糖尿病の歴史

インスリンの発見が糖尿病治療の歴史を変えた

×
国産食材使用 ミールタイム 私のおせち

[広告]
×
国産食材使用 ミールタイム 私のおせち
[広告]

糖尿病 (7章-1) 紀元前から語られる糖尿病治療の歴史

糖尿病はいつから人に認識され、
症状を軽減するための治療はどのように発展してきたのでしょうか。
糖尿病の歴史をひもとくとともに、
治療に大きな効果をもたらしたインスリン発見の経緯について解説します。

糖尿病は紀元前から人を苦しめてきた病

 糖尿病の歴史は、紀元前までさかのぼります。糖尿病に関する最も古い情報は紀元前1550年頃、エジプト王朝時代に書かれた医書「パピルス・エベルス」で触れられています。この本では、内科疾患、目の病気、皮膚の病気、歯の病気、婦人の病気、耳の病気などの治療法を記載しています。その中に、「多尿を追い払う処方」という項目があり、この多尿が糖尿病を含む疾患を意味しているのではと考えられています。
 糖尿病の症状について具体的に記した書物は、紀元前600年頃に栄えた古代インド文明時代にあります。インドの外科医が書いた医学書「スシュルタ集成」にある「姿勢の変化により知られる予後」という項目の中に、「猛烈な飢えや、いやしがたい渇きが、衰えた患者にある」「下痢、激しい頭痛、のどの渇きが現れる」とあります。この記述に該当する病気が糖尿病を指していると考えらます。なお、古代インド医学では糖尿病のことを「マドゥーメハ(蜜の尿)」と呼んでいました。患者の尿が、蟻や昆虫をおびき寄せるほど甘かったことに由来します。
 スシュルタ集成では、マドゥーメハになる人の特徴も記されています。「昼寝をむさぼり、座ってばかりで体を動かさず、甘い飲み物や冷たい脂肪質の食事を取る人」と書かれています。症状については、「手や足が熱く、あるいは冷たく感じ、体は重く、薄くて甘い尿を出し、眠く、だるく、のどが渇き、呼吸が激しく、悪臭がする」などと記されています。
 紀元1世紀になると、中国の医学書「黄帝内径素問」でも糖尿病と思われる病気が登場します。日本で糖尿病という病気が伝わったのは10世紀末になります。丹波康頼が書いた医学書「医心方」で取り上げられています。

インスリンの発見が糖尿病治療の大きな転機に

 糖尿病は古くから、症状や発症の原因となる生活習慣まで医書に書きとめられていました。しかし具体的な治療法には触れられず、長きにわたり、不治の病として糖尿病は恐れられていたのです。
 しかし、ある発見が大きな転機となります。それが「インスリン」です。カナダの医師であるフレデリック・バンティングとチャールズ・ベストが1921年、インスリンを発見します。バンティングは糖尿病で末期状態だった13歳の少年をインスリン注射によって助ける功績も残しています。
 当時のインスリンは一度に何度も注射しなければなりませんでした。インスリンの材料には牛や豚の膵臓から抽出したものが使われていたため不純物も多く含まれていたといいます。注射するときには強い痛みを伴い、皮膚に炎症が現れるといった副作用も見られました。
 その後、改良が重ねられ、1980年以降になると副作用の少ない「ヒトインスリン」が用いられるようになります。注射器具自体も痛みを減らすよう改良され、患者の治療への負担は大きく軽減されるようになります。

インスリンに用いる注射器は進化

 注射針を刺してインスリンを体内に注入する注射器がこれまで主流だったが、最近は痛みを軽減する「ペン型」と呼ばれる注射器が普及している。

糖尿病 (7章-2) 糖尿病治療の進化と現在

糖尿病治療は、相次ぐ新薬の登場により以前と比べて格段に進歩しています。
糖尿病における治療の在り方は、具体的にどう変わっていったのでしょうか。
ここでは糖尿病治療のこれまでの経緯について解説します。

インスリンを軸とする薬物治療の発展

 不治の病といわれ続けた糖尿病を治療できる病気へと変えたのは、1921年に発見されたインスリンでした。インスリン製剤を使用することで、糖尿病によって早期に命を落とす患者はいなくなったといいます。
 それからインスリンは進化し、効き目の持続時間が異なる製剤が登場するなど、患者の状況に応じて最適な製剤を選べるようになりました。インスリンを注射するときの方法も進化しています。「インスリンポンプ療法」(CSII)という方法では、携帯型のインスリン注入ポンプを装着し、インスリンを皮下に継続して注入できるようにしています。インスリンをその都度注射するといった手間を省きます。
 インスリン発見以降、経口薬も数多く登場しています。すでに発売中止となった薬もありますが、1961年に登場したビグアナイド(BG)薬のメトホルミンは、現在も主要な血糖降下薬の1つとして広く使用されています。
 近年に限れば2つの新薬が登場し、治療の選択肢を増やすのに貢献しています。1つはインクレチン関連薬です。インクレチンは食事を取るときに消化管から分泌され、膵臓のβ細胞に働きかけてインスリンの分泌を促す効果があります。そのインクレチン関連薬の1つが経口薬のDPP-4 阻害薬です。2009年にシダグリプチンという薬が登場して以降、数種類の薬が登場しています。DPP-4阻害薬は、インクレチンを分解するDPP-4を阻害します。
 2010年に登場したGLP-1受容体作動薬は、インクレチンの一種であるGLP-1をDPP-4に阻害されにくい形にした注射剤です。GLP-1受容体作動薬の中には作用時間が長く、1週間ごとに投与するだけでも効果が持続するものもあります。
 もう1つの新薬は2014年より発売されたSGLT2阻害薬です。体内のブドウ糖を尿と一緒に排せつして血糖値を下げます。体重を減少させる効果もあることから肥満の患者にも向いています。

DPP-4阻害薬とSLGT2阻害薬の効果

超高齢化社会に向けた取り組み

 日本は高齢者の割合が増える時代へと突入しています。総務省の調べによると、総人口に対する65歳以上の高齢者の割合は26.7%となり、高齢者人口は3,384万人を数えます。今後も高齢者は増え続け、内閣府が発表した「平成28年版高齢社会白書」によると、65歳以上の高齢者数は2025年には3,658万人、2040年には3,868万人になると推計しています。
 このとき問題となるのが、糖尿病患者の高齢化です。加齢とともに身体機能が低下していくことから、糖尿病治療においてさまざまな問題が起こることが懸念されます。高齢者の糖尿病患者は生活の質が低下するのに加え、認知症などによって適切な治療を継続して行うのが難しくなります。また、加齢に伴う筋肉量の減少、内臓脂肪の増加から身体機能の低下を伴う「サルコペニア」と呼ぶ状態に陥りやすくなります。
 こうした状態が血糖コントロールに支障をきたします。自分で血糖値や血圧をコントロールするのが難しくなることで、合併症などを併発しやすくなり、症状が一気に悪化する恐れがあります。
 また、高齢化社会で問題となるのが、独居や老老介護などといった生活スタイルによって、セルフケアが難しい糖尿病患者が増えることです。そこで国は現在、地域包括ケアシステムや在宅医療といった取り組みを推進しています。地域包括ケアシステムとは、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けられるようにする支援体制です。住まい、医療、介護などを包括してケアするようにします。医療面では、医師や看護師だけではなく、栄養士や薬剤師なども参画し、チームとして在宅医療を支援します。糖尿病患者は日々の適切な血糖コントロールが欠かせないことから、チームとして医療を拡充できるようにします。糖尿病はもちろん、高齢者が患うさまざまな病気を治療、もしくは予防できるようにするため、国が主導して医療体制を拡充する動きが急ピッチで進んでいます。