痛風の基礎知識
痛風(第1章)

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似ている病気に注意!痛風になるとどんな症状が?

痛風 (1章-1) 痛風になりやすい人とは

足に激しい痛みを伴う「痛風」。どんな人がかかりやすいのでしょうか。
発症しやすい人の食生活を含め、なりやすい人の傾向を探ってみましょう。

圧倒的に男性に多い

 ある日突然、足の親指の付け根などに激しい痛みと炎症が生じる「痛風発作」。原因は血液中に存在する尿酸という物質です。
 血液中の尿酸値(血清尿酸値)は7.0mg/dL以下なら正常、これを超えると高尿酸血症と定義されます。この数値は血液中に溶ける尿酸の量(飽和溶解度)から算出しており、男女共通です。しかし、健康な人の平均的な尿酸値は、女性より男性の方が高い傾向にあります。血液検査の結果報告書などでは、尿酸値の正常値が男性は3.8~7.5mg/dL、女性は2.4~5.8mg/dLと記載されているケースが多いことからも、尿酸値の男女差が大きいことが分かります。

高尿酸血症の目安

 尿酸値が7.0mg/dL以下は正常だが、超えると高尿酸血症となる。なお、結果報告書などによると、男性と女性とで正常値は異なる。  このように、男性は女性より尿酸値が相対的に高く、7.0mg/dLを超える人は男性に圧倒的に多く見られます。そのため痛風発作を起こす人は男性に多く、痛風患者の約95%を男性が占めています。
 痛風患者の少なかった50年くらい前は、痛風発作を起こす人は男性、特に年配の富裕層に多いと考えられていましたが、その後は患者数が急増し、近年は30代での発症も目立ちます。

痛風になりやすい体質がある

 尿酸値は遺伝的な体質と生活習慣で上下することが分かっています。最近の研究で、腎臓から尿酸を排せつする能力には個人差があり、この力が弱い人は尿酸値が上がりやすく、痛風になりやすいことが分かっています。尿酸を排せつする力は、尿酸トランスポーターというタンパク質の働きによって遺伝的に決まっています。遺伝子を変えることはできず、このタンパク質の働きを変えることは不可能なため、若年時から尿酸値の高い人や痛風を発症してしまった人では、尿酸値を上げないように生活習慣に気をつけることが必要です。

尿酸値が高くなりやすい食材に注意

 尿酸値は食事内容や食べ方の影響を大きく受けることが分かっています。一般的には、肉や魚介類を多く摂取すると尿酸値が高まります。また、痛風発作の経験者には大食の人が多く、痛風患者の60%が肥満です。
 アルコールにも尿酸値を高める作用があり、痛風患者にアルコール好きが多いのも事実です。アルコールを分解するときに尿酸が作られることや、同時に産生される乳酸という物質に、尿酸の排せつを妨げる作用があることなどと関係しています。
 砂糖入り飲料や果糖(果物に含まれる糖分)の摂取量が多い人ほど、痛風の発症率が高いことも指摘されています。

激しい運動を好む人、ストレスの強い人もリスク大

 一般的には健康によい運動も、やり方次第では尿酸値を上げます。特に尿酸値を上昇させるのは、短距離走や筋力トレーニングなど、短時間に大きな負荷をかけるタイプの無酸素運動です。こうした運動を好む人は、高尿酸血症や痛風発作のリスクが大きいといえます。
 また、精神的なストレスが尿酸値を高める要因になることも分かってきています。仕事でのプレッシャーや人間関係におけるトラブルなどを解消することが大切ですが、ストレスを解消するためにたくさん食べたり飲んだり、激しい運動をしたりという行動に走ることが尿酸値を上げている可能性も高いと考えられます。

腎臓や血液の病気の人も気をつけて

 病気の中には、尿酸値を上昇させるものもあります。例えば腎臓病や一部の血液に関する病気は、尿酸を排せつしにくくすることで尿酸値が高まります。また、悪性腫瘍により尿酸の産生が進んで尿酸値が上昇することもあります。薬剤が尿酸値を上昇させることもあります。利尿薬や抗結核薬、免疫抑制剤などにそのリスクが確認されており、これらを服用する人は尿酸値の変動に注意が必要です。
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痛風 (1章-2) 痛風や高尿酸血症とはどんな病気か

痛風や高尿酸血症とは具体的にどんな病気を指すのでしょうか。
ここでは、痛風や高尿酸血症のメカニズムについて解説します。

痛風は尿酸塩結晶の蓄積が引き起こす炎症

 「痛風」とは、体内に蓄積した尿酸の結晶(以下、尿酸塩結晶)が原因となって、関節炎などを生じる病気です。痛風による関節炎(痛風関節炎)は急激に発症することが多く、この急性痛風関節炎は「痛風発作」と呼ばれます。発作時の痛みは非常に強く、一歩も歩けないほどの激痛になる場合もあります。痛風発作は、体の防御機構が尿酸塩結晶を異物と認識して排除しようとするために起こります。
 痛風関節炎は、足の親指の付け根(第一中足趾節《ちゅうそくしせつ》関節)に生じることが最も多く、よく知られていますが、ほかにも足の甲、足首に多く、重症化すると膝関節や手関節などで起こることもあります。

痛風関節炎の起こりやすい部位

足の親指の付け根以外に足の甲や足首、手首、膝などで起こることがある。

 また、急性痛風関節炎を適切な治療をせずに放置すると、慢性化することがあります。慢性化すると尿酸塩結晶の蓄積が進み、その部分が瘤(こぶ)のようになります。これを「痛風結節」と呼びます。痛風結節は、「温度が低く、血流が乏しく、力学的刺激を受けやすい部位」に見られることが多く、関節のほかに耳たぶの皮膚の下などにできることがあります。ただし、尿酸値を下げるための治療が確立された現在では、痛風結節ができるまで進行する例は少なくなっています。

高尿酸血症は尿酸値が7.0mg/dLを超えた状態

 痛風の原因である尿酸は、人間の体内で日々繰り返されている代謝活動によって生じる物質です。さらに詳しくいえば、「遺伝子の本体」といわれるDNAや、「生体のエネルギー通貨」と呼ばれ、筋肉の収縮といった生命活動で利用されるエネルギーの貯蔵や利用にかかわるATP(アデノシン三リン酸)が分解されるときに尿酸は作られます。つまり尿酸は、生物として必要な情報をやりとりしたり、エネルギーにかかわる物質を代謝したりした結果、産生されるものなのです。
 尿酸は普段、体内で自然に産生と排せつが繰り返されることで、一定の値を保っています。男性の場合は3.8~7.5mg/dL、女性の場合は2.4~5.8mg/dLとなります。しかし、7.0mg/dLを超えて尿酸が増えると血液中に溶けきれなくなり、結晶化が進んで関節などに蓄積するようになります。この7.0mg/dLを超えた状態が「高尿酸血症」です。さらに尿酸値の高い状態が続いて尿酸塩結晶が蓄積し、関節炎などに至った状態が「痛風」です。

高尿酸血症はさまざまな病気のリスクを高める

 高尿酸血症の状態を放置した結果、起こりうる病気の代表は痛風です。しかしほかにも、慢性腎臓病(CKD)、尿路結石、メタボリックシンドローム、高血圧、心血管系疾患などのさまざまな病気や病態のリスクを高める危険があります。また、尿酸値の低い集団より尿酸値の高い集団の方が、死亡率が高いという研究結果が複数報告されています。
 ある大規模調査によると、日本の男性の4人に1人は高尿酸血症で、年代別では30代が最も多く、40代と20代が続きます。さまざまな病気のリスクを高める高尿酸血症の頻度が、若年層にも広がっているのです。
 血液中の尿酸値は血液検査で分かります。7.0mg/dLを超えていれば高尿酸血症ですから、高尿酸血症の診断は容易です。高尿酸血症の人が痛みや腫れを伴う関節炎を繰り返すようなら痛風が強く疑われます。痛風の診断も比較的容易です。
 ただし、痛風の確定診断のためには、関節液を取って顕微鏡で確認したり、痛風と似た病気と区別するために画像検査したりするなどが必要です。痛風の人の関節液を偏光顕微鏡という特殊な顕微鏡で観察すると、針状になった尿酸塩結晶が白血球に攻撃されている様子を確認できます。

痛風 (1章-3) 痛風に見られる症状

痛風になるとどんな症状に見舞われるのでしょうか。
ここでは痛風による具体的な症状を見ていきましょう。

突然起こる関節の激痛と腫れが主症状

 痛風の最も典型的な症状は、ある日突然、関節で起こる激しい痛みと腫れです。数ある関節の中でも、痛風発作が最も起こりやすいのは足の親指の付け根(第1MTP関節)です。痛風発作の70%程度はこの部分で起こります。比較的発作の起こりやすい関節は、そのほかに足の甲、足首、膝、足の甲、くるぶし、親指以外の指の付け根、手の指の関節、手首、肘などがあります。痛風発作の痛みは非常に強く、足で起こると歩行困難になるほどです。
 発作の起こる時間が夜間に多いのも特徴です。激しい痛みが最初に起こり、2~3時間すると痛みの起きた場所が赤く腫れます。その後もさらに症状は強まり、発作が始まってから24時間以内に痛みはピークに達します。

痛みや腫れは7〜10日で治まり、その後は無症状に

 痛みや腫れの症状が治まるのにかかる期間は、通常は長くても7〜10日間程度です。発作が治まると何事もなかったかのように無症状の状態に戻るのもまた、この病気の特徴です。
 痛風発作が治まった後、無症状で経過する時期を「間欠期」といいます。この間は、特に何も感じないまま、通常の生活を送ることができます。そのため病院に行かない人は少なくありません。しかし、症状がなくても治ったわけではないことを忘れてはいけません。症状が治まっても高尿酸血症には変わりなく、そのまま放置すればやがて2回目の発作が起こります。さらに放置すれば発作を繰り返すようになります。
 発作を繰り返すと「慢性関節炎」に移行し、尿酸塩結晶が大量に蓄積した瘤(こぶ)(痛風結節)ができたり、複数の関節で発作が起こるようになったりと重症化することがあります。痛風結節は耳介(じかい)にニキビくらいの大きさでできることがあれば、大きい関節ならゴルフボール大、あるいはリンゴくらいの大きさになることもあります。

慢性関節炎は複数の関節で発作が起こる

 慢性関節は膝や肘といった関節はもとより、手や足の指の関節などにも発作が起こる。

 痛風結節自体は痛みなどの症状を伴いませんが非常に固く、大きくなると関節の自由が利かなくなったり、骨が変形したりする問題が生じます。こうなると効果的な治療は難しくなります。また、耳介にできた場合、破れて瘤の中の尿酸が出てくることもあります。重症化を避けるためには、1回目の発作で医療機関をすぐに受診することが大切です。 以下は痛風関節炎の診断基準になります。1、2、3のいずれかを満たすと痛風と診断されるのが一般的です。

痛風関節炎の診断基準

 出典:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版(一部を改編/補足)

痛風 (1章-4) 痛風と似ている病気

足の親指の付け根が痛むケースが多い痛風。しかし、痛風と決めつけるのは早計です。
ここでは痛風の症状に似ている病気について解説します。

下肢に痛みや腫れの起こる病気と区別を

 関節が痛くなったり、足が腫れたりと、痛風を疑いたくなるような症状の現れる病気はほかにも多々あります。痛風関節炎(痛風発作)との鑑別診断を必要とするものを、痛みの起こる主な部位別に示しました。その中でも有名なものや聞き慣れないものを解説します。

痛風関節炎の鑑別診断

出典:「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版」

外反母趾(ぼし)・バニオン

 外反母趾は、足の親指の付け根の部分が突出して痛みや腫れを伴います。原因は骨の変形、靭帯のゆるみ、生まれつきの変形、異常発達などさまざまです。女性がパンプスやハイヒールを脱げないように無理な力をかけ続けることで生じるケースもあります。また、関節リウマチなどの病気の症状として外反母趾が見られることもあります。バニオンは骨の上に粘液がたまる症状で、親指の付け根と靴の摩擦によって起こります。

蜂窩(ほうか)織炎

 皮膚やその下の皮下組織が、毛穴や汗腺、傷口などを通して細菌に感染することで痛みや腫れが起こります。蜂巣炎(ほうそうえん)とも呼ばれます。炎症が起きている部分を顕微鏡で観察すると、蜂の巣のように見えることからこの名前がつきました。発熱などの全身症状を伴ったり入院が必要になったりするケースもありますので、軽視は禁物です。

モートン病

 足の第三趾と第四趾の間の部分にしびれ、痛み、灼熱(しゃくねつ)感などの症状が現れます。指に変形のある人や、ハイヒールをよく履く人などに目立つ神経障害です。

変形性関節症

 関節のクッション役を果たす軟骨がすり減って痛みや炎症が起こります。関節の酷使や老化が主な原因で、悪化すると変形することもあります。膝関節や股関節で変形性関節炎が起こって悪化すると、歩行困難になることもあります。

関節リウマチ

 痛みや腫れが慢性的に続き、関節が破壊されて変形する病気です。原因は不明ですが、女性に多く、関節内に存在する滑膜という組織が異常増殖することが分かっています。関節に限局した病気ではなく、全身病として関節症状のほかに、いろいろな臓器障害を伴うこともあります。

偽痛風

 尿酸塩結晶の蓄積によって起こる痛風に対し、ピロリン酸カルシウム結晶尿の蓄積によって起こる関節炎を偽痛風と呼びます。高齢者に多く、性別を問わず起こります。多くは加齢による症状で、痛風と違って原因療法はありません。

足底腱膜炎

 土踏まずの部分に張るように存在する足底腱膜に炎症が起こります。痛みが出やすいのは足底腱膜がかかととつながる部分で、アスリートによく見られます。

踵骨後部滑液包炎

 かかとの骨とアキレス腱の間には、クッションのように働く滑液包という組織があります。この組織が炎症するのが踵骨後滑液包炎で、かかとの後ろが痛くなります。運動などで強い力が加わることによる炎症が見られます。かかとの骨の隆起が原因となるケースもあります。

痛風 (1章-5) 激しい運動は尿酸値上昇を招く危険が

さまざまな病気の予防や治療に効果を発揮する運動も、
やり方によっては逆効果になる恐れがあります。
尿酸値のコントロールにおいて逆効果につながるリスクが高いのは、
いわゆる激しい運動です。

エネルギー消費の過程で尿酸の合成が進む

 尿酸値を上昇させる要因の1つに「運動」があります。ただし運動といっても、高尿酸血症のリスクになるのは激しい運動、つまり、短時間に大きなエネルギーを消費する運動です。短距離走などの無酸素運動(アネロビクス)がそれにあたります。
 私たちは運動するときに必要なエネルギーを体内で作り出します。このとき利用するのが糖質、脂質、タンパク質などの栄養素を、二酸化炭素と水に分解する燃焼反応です。燃焼反応は、ガソリンを燃やして走る車をイメージすると理解しやすいかもしれません。
 この燃焼反応には酸素を使う有酸素性のものと、酸素を使わない無酸素性のものがあります。反応の速度は無酸素性の方が速いため、短時間に大きなエネルギーを必要とする、激しい運動の際には無酸素性の反応が主となります。無酸素性の反応でエネルギーを作りながら運動する、これが無酸素運動です。
 無酸素運動では、ATP(アデノシン三リン酸)という物質を大量に消費します。ATPは、アデノシン(A)という物質に3つの(T)リン酸基(P)が結合したもので、リン酸基が1つ外れるごとにエネルギーが放出され、同時に尿酸の合成が進みます。筋肉が貯蔵するATPの量は限られるため、大量に消費するとすぐに不足してエネルギーを作れなくなります。無酸素運動を長時間続けられないのはこのためです。

尿酸の原料はプリン体

 尿酸が作られる過程をもう少し詳しく見てみましょう。
 尿酸は、生物としての人間の代謝活動の結果として作られる物質です。プリン体という物質が代謝される際に作られる老廃物で、通常なら尿や便、汗とともに排せつされます。
 尿酸の原料であるプリン体は、食事に含まれるものが20%程度で、残りの80%は体内で合成されます。例えば、遺伝子の本体であるDNAやRNA、ATPなどの物質もプリン体から作られており、これらの分解の過程でもプリン体が出てきます。食事由来のプリン体も代謝で生まれるプリン体も肝臓で分解され、尿酸が作られます。

プリン体は肝臓で分解されて尿酸に

 食事由来のプリン体、体内で合成されるプリン体ともに肝臓で分解され、尿酸が作られる。

激しい運動は尿酸の排出に悪影響

 「尿酸値が上がる」という言葉には「尿酸の合成が進む」という意味のほかに、「尿酸の排出が悪くなる」という意味を含みます。激しい運動は筋肉内で乳酸を産生させますが、この乳酸が増えると腎臓からの尿酸の排せつが低下します。この意味でも、高尿酸血症にとっては大敵です。
 運動による脱水もまた、尿酸値を高める要因です。激しい運動は大量の発汗を伴いますが、汗をかくと体の水分が奪われるため、一時的に脱水状態になることがあるのです。
 このように激しい運動は、さまざまな意味で尿酸値上昇の危険をはらみます。運動中や運動後に尿酸値が急上昇し、痛風発作を起こすことは珍しくありません。尿酸値の高めの人が運動する場合、短時間に激しく運動する無酸素運動ではなく、時間をゆっくりかけて無理せず行う有酸素運動を基本にしてください。また、運動する場合は事前に主治医とよく相談することが大切です。