脂質異常症の合併症
脂質異常症(第3章)

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様々な合併症を引き起こす脂質異常症、糖尿病との関係は?

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脂質異常症 (3章-1) 脂質異常症が招く合併症のリスクとは?

脂質異常症は、さまざまな合併症を引き起こすリスクを高めます。
ここではその要因と、併発しうる主な合併症を紹介します。

動脈硬化への注意が先決

 脂質異常症によって血液中に脂質が多い状態が続くと、さまざまな合併症を引き起こします。具体的には血管で動脈硬化が進行し、血管(動脈)の内側の壁にコレステロールなどが沈着してプラーク(粥腫)を作ります。プラークは破れやすく、もし破れると血栓が出てきます。血栓が血管に詰まると「心筋梗塞」を起こします。
 一方、LDLコレステロールが血液中で増えた状態を「高LDLコレステロール血症」といいます。高LDLコレステロール血症の合併症は動脈硬化が原因で発症する場合が多く、これらは動脈硬化性疾患と総称されます。

動脈硬化が合併症を起こすリスクを高める

 脳梗塞や心筋梗塞などは、高LDLコレステロール血症の合併症として動脈硬化に起因して発症するケースが多い。

 動脈硬化性疾患には「脳梗塞」、「心筋梗塞」、「狭心症」、「高血圧」、「大動脈瘤(りゅう)」、「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」、「腎硬化症」などがあります。また、高LDLコレステロール血症が原因で「胆石」などが起こることもあります。それぞれの疾患について以下で見ていきましょう。

脳梗塞・脳出血・狭心症・心筋梗塞・大動脈瘤

 動脈硬化性疾患の中でも注意したいのが、脳梗塞や狭心症などの脳や心臓にかかわる病気です。血管に負担がかかって脳の血管に動脈硬化が生じれば、血管がふさがる「脳梗塞」や、破れて出血する「脳出血」を引き起こします。心臓の動脈なら「狭心症」が起こり、血の塊である「血栓」が動脈で詰まる「心筋梗塞」も起こりかねません。さらに、動脈硬化が腹部や胸の動脈に発生すると、動脈が瘤(こぶ)のように膨らんで破裂しやすくなる「大動脈瘤」を発症することもあります。大動脈瘤は、全身に血液を送る大血管に起こることが多く、命にかかわることも少なくありません。

高血圧

 高血圧は、文字通り血管の中を流れる血液の圧が高くなった状態を指します。動脈硬化によって血管が狭まって血液が流れにくくなると、血液が血管の内側の壁を押す力が強くなってしまいます。

間欠性跛行

 足の末梢動脈に動脈硬化が生じると起こりやすくなります。間欠性跛行は、5~10分程度歩いただけで腰や足が痛くなるものの、少し休むと痛みが消えてまた歩けるようになる病態をいいます。症状が出始めた頃は少し休むと痛みは消えますが、また少し歩くと痛くなり、休み休みでないと歩けなくなります。

腎硬化症

 腎臓の動脈に動脈硬化が発生することによって腎臓へ流れる血液の量が減少し、腎臓の機能が低下する病気です。老廃物などが排出しにくくなります。悪性腎硬化症になると激しい頭痛や動悸(どうき)、息切れ、視力障害などが起こります。腎臓の機能が急速に低下して尿毒症や心不全に陥り、死亡してしまう場合もあります。

胆石

 肝臓から分泌される胆汁に含まれるコレステロールなどの成分が、胆嚢や胆汁の流れ道である胆管の中で固まり、詰まってしまう病気です。動脈硬化と直接関係ありませんが、高コレステロールによって発症する病気の1つです。

高中性脂肪血症の合併症

 高中性脂肪血症は、脂質異常症の中でも「中性脂肪」の値が高い病態です。高中性脂肪血症の主な合併症は、急性膵炎(すいえん)と脂肪肝です。

急性膵炎

 膵炎は、何らかの原因で活性化した膵酵素が自分の膵臓を消化してしまい、膵臓やその周辺の臓器が炎症する病気です。急性と慢性に分けられ、急性膵炎はみぞおちから左上腹部に激しい痛みを伴います。急性膵炎は過度の飲酒で発症する場合や、血液中の中性脂肪値が極端に高い(1500mg/dL以上)場合に起こることがあります。

脂肪肝

 中性脂肪が皮下や内臓にたまると肥満になりますが、肝臓にたまると脂肪肝になります。肝臓の脂肪が全体の10%を超えると、肝臓の細胞の中に泡状の脂肪滴が現れるようになります。脂肪滴を伴う幹細胞が全体の約30%を超えると「脂肪肝」と呼ばれます。慢性の脂肪肝は、脂質異常症の中でも高中性脂肪血症で起こりやすく、肥満や糖尿病を合併する場合も少なくありません。

脂質異常症 (3章-2) 注意したい動脈硬化

脂質異常症で注意したいのが動脈硬化です。
動脈硬化を併発すると、さまざまな命にかかわる病気を引き起こしかねません。
ここでは動脈硬化のリスクについて考えます。

脂質異常症を放置すると

 脂質異常症とは、血液中のLDLコレステロールや中性脂肪が増えすぎたり、HDLコレステロールが減りすぎたりする病気です。脂質の値に異常が生じても自覚症状はほとんどないため診断が遅れがちになり、治療せず放置してしまう人が少なくありません。しかしこうした状態を放置すると動脈硬化がじわじわと進行します。
 動脈硬化は動脈の壁にコレステロールが沈着して血管が狭まったり、動脈が弾力を失って硬くなったりして、血流が悪くなった状態を指し、病名ではありません。
 しかし心臓や脳の血管に動脈硬化が生じれば、狭心症や心筋梗塞、脳出血、脳梗塞などの命にかかわる病気を引き起こします。こうした病気の症状が現れる前から動脈硬化は静かに進行し、症状が出て初めて気づくケースがほとんどです。脂質異常症を放置すると命を失う可能性があることを覚えておきましょう。

動脈硬化は自覚症状のないまま進行する

 脂質異常症になると、なぜ動脈硬化が進行するのでしょうか。血管の内膜表面を覆う「内皮細胞」の層は血液から必要な成分を取り込み、ほかの成分が入り込まないようにしたり、血液が固まるのを防いだりし、血液が内皮細胞につかないようにする役目を果たしています。この内皮細胞がさまざまな刺激によって傷つくと、その傷を修復しよう血液中の白血球がつき、内皮細胞の間から血管壁に潜り込みます。すると、死んだ細胞などを食べる「マクロファージ」という“掃除屋”に変化します。
 血液中のLDLコレステロールが多くなると、マクロファージに呼び寄せられた脂肪物質が血管壁に次々取り込まれ、血管の内膜はお粥のようなじゅくじゅくした堆積物で厚くなります。このお粥状の病変であるプラーク(粥腫)は血管の内側に向かって盛り上がるため、血管の内腔が狭くなって血液が流れにくくなるのです。
 狭い血管を無理やり血液が流れようとすると、血流と内膜の間に負担が生じ、内膜を覆う被膜が破れ、「血栓」という血の塊が形成されます。この塊がはがれて血流に乗って心臓や脳の細い血管を詰まらせると、心臓病や脳の病気を発症させてしまうのです。
 また、LDLコレステロールだけでなく中性脂肪にも注意が必要です。血液中に中性脂肪が増えすぎると、余分なコレステロールを回収するHDLコレステロールが減少します。HDLコレステロールによって抑えられていたLDLコレステロールが増え、さらに動脈硬化は進行します。

中性脂肪の増加がHDLコレステロール減少を招く

 血液中の中性脂肪が増加するとHDLコレステロールが減少し、その結果としてLDLコレステロールが増えてしまう。LDLコレステロールが増えることで動脈硬化が進行しやすくなる。

 動脈硬化を進行させる危険因子の中には、高血圧や喫煙、糖尿病などの「自分の努力によってコントロールできるもの」があります。脂質異常症もコントロール可能な危険因子の1つです。命にかかわる深刻な病気を引き起こさないためにも、脂質のコントロールが必要です。

脂質異常症 (3章-3) 脂質異常症は「糖尿病」を併発するリスクが高まる

脂質異常症になると動脈硬化が徐々に進行する恐れがあります。
その一方で、糖尿病を併発して動脈硬化を招くこともありえます。
ここでは合併症のリスクが高い糖尿病を中心に解説します。

糖尿病と脂質異常症の関係

 糖尿病は代表的な生活習慣病の1つで、40歳以上の日本人の8人に1人がかかっているといわれています。厚生労働省の「平成26年患者調査」よると、糖尿病の総患者数(継続的な治療を受けていると推測される患者数)は、316万6,000人に上ります。3年前の調査から46万人以上増え、年々増加しています。 糖尿病は、本来エネルギーとして使われるはずの「ブドウ糖」が余って血液中にあふれる病気です。血液中のブドウ糖の数値(血糖値)が上昇した状態を放置すると血管が傷つき、3大合併症と呼ばれる「糖尿病神経障害」、「糖尿病性網膜症」、「糖尿病性腎症」を引き起こします。さらに「壊疽(えそ)」や「脳卒中」「虚血性心疾患」といった命にかかわる合併症を発症することも少なくありません。
 糖尿病は脂質異常症と密接に関係しています。糖尿病の原因には、膵臓から分泌される「インスリン」というホルモンがかかわっています。インスリンは血中のブドウ糖を調節する役割を担うため、インスリンが分泌されなかったり働きが悪くなったりした場合、糖尿病を発症するといわれています。
 しかしインスリンの働きは、血糖値を下げるだけではありません。肝臓で中性脂肪を分解するリポ蛋白リパーゼという酵素を活性化させる働きもあります。インスリンが不足すると中性脂肪が分解されにくい状態となり、血液中に中性脂肪がたまりやすくなってしまうのです。
 さらに中性脂肪が血中に増えることで、余分なコレステロールを回収するHDLコレステロールは減少し、LDLコレステロールが増加します。こうして糖尿病の人は、中性脂肪やコレステロールが増えて脂質異常症を併発し、動脈硬化を起こしやすくなるのです。また、中性脂肪は糖質が原料であるため、血液中に糖分が多い糖尿病の人は、中性脂肪が作られやすい状況といえるでしょう。

糖尿病患者は積極的な脂質異常症の治療が必要

 糖尿病は脂質異常症の進行に拍車をかけ、その結果として動脈硬化による心筋梗塞や狭心症、脳卒中などのさまざまなリスクをさらに高める――という悪循環に陥りやすくなります。

脂質異常症と糖尿病が病気のリスクを高める

 脂質異常症と糖尿病になると、心筋梗塞や狭心症、脳卒中といった命にかかわる病気の発症リスクを高める。糖尿病患者は脂質異常症の積極的な治療が求められる。  そのため糖尿病患者が狭心症や心筋梗塞を防ぐためには脂質異常症を積極的に治療する必要があり、糖尿病患者の脂質管理目標は厳しく設定されています。
糖尿病患者の脂質異常症管理目標は、狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患にならないようにする「1次予防」と、すでに冠動脈疾患にかかったことのある人が再発や悪化を防ぐ「2次予防」に分かれています。1次予防は、LDLコレステロール値が120mg/dL未満、HDLコレステロールが40mg/dL以上、中性脂肪値が150mg/dL未満です。2次予防の場合、LDLコレステロール値が100mg/dL未満、HDLコレステロール値が40mg/dL以上、中性脂肪値が150mg/dL未満とさらに厳しくなります。

まず生活習慣の改善を心がける

 糖尿病の人が肥満になると脂質異常症がさらに起こりやすくなることから、脂質異常症の治療では食生活や運動が重要となります。
 しかし、脂質の摂取制限や有酸素運動を行うなどの生活習慣の改善に努めても管理目標値に達しない場合や、すでに冠動脈疾患にかかったことのある患者では、より厳格に脂質を管理しなければなりません。そのため、薬物療法が必要になります。2015年に開催された第58回日本糖尿病学会年次学術集会の発表によると、糖尿病患者を対象とした臨床研究では、薬物療法でコレステロール値などをコントロールすることで冠動脈疾患の発症が抑制されることが明らかにされています。