腎臓病の基礎知識
腎臓病(第1章)

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慢性腎臓病(CKD)という概念で腎臓病を早期発見

腎臓病 (1章-1) 腎臓の働きと腎機能低下によるリスク

私たちの生命活動を支える上で、腎臓はどのような役割を担っているのでしょうか。
また、腎臓が悪くなるとどのような影響を及ぼすのでしょうか。
腎臓の働きと腎機能の低下で起こりうるリスクを見ていきましょう。

腎臓の仕組みと血液のろ過機能

 腎臓はアズキ色でソラマメのような形をしています。大きさは握りこぶし程度の大きさで、体の左右に1つずつあり、腰の辺りの背中側に位置しています。
 この両方の腎臓に、心臓から送り出された全血液の5分の1ほどが絶えず流れ込んでいます。腎臓の基本的な働きは、流れ込んできた血液をろ過して余分な水分や老廃物を除去すること、つまり汚れた血液をクリーニングする役割を担っています。ろ過された老廃物は尿として排せつされますが、その仕組みをもう少し詳しくお話ししましょう。

腎臓が血液をろ過する仕組み

腎臓にある「糸球体」では、老廃物などを含む血液をろ過し、きれいな血液にして体内へ戻す役割を果たしている。

 腎臓にはネフロンと呼ばれる組織が、片方の腎臓だけで約100万個あります。ネフロンは、血液をろ過して原尿(尿のもと)を作る「糸球体」、糸球体を包み込むようにして原尿を受け止める「ボーマン嚢(のう)」、原尿から水分や必要な成分を再吸収する「尿細管」で構成されています。
 腎臓に血液を送る腎動脈は枝分かれし、やがていくつもの毛細血管が絡まった毛糸玉状の組織になります。これが糸球体です。血液が糸球体に流れ込むと、タンパク質などの大きな成分はろ過されず、水分などの小さな成分は毛細血管からこし出されます。これが原尿で、1日に150Lも作られています。
 もちろん、原尿がそのまますべて尿になるわけではありません。体に必要な水分や栄養素、電解質など、原尿の99%が尿細管で再吸収され、血管に戻されます。つまり残りの1%、1.5Lほどが腎盂(じんう)を経由し尿として排出されるのです。

体液の量や成分の調整も重要な役割

 腎臓は血液のろ過と老廃物の排せつだけでなく、私たちが生命を維持する上で重要な、さまざまな成分の調整も行っています。具体的には、(1)体液量、(2)電解質濃度、(3)酸塩基平衡(pH)などを調節し、環境の変化に応じて体内の状態を一定に保つようにしています。

 (1)体液量の調節
 人間の体の約6割は水分、つまり体液です。常に適度な体液量を維持するために、気温や水分摂取量などに応じて尿の量を抑えたり、増やしたりします。
 (2)電解質濃度の調節
 体液にはナトリウム、カリウム、リンなどの電解質と呼ばれるさまざまな成分が、一定のバランスで溶けています。電解質は細胞の浸透圧を調節したり、神経の伝達や筋肉の運動に深く関わったりします。腎臓はこれら電解質を一定に保つ役割を担っています。
 (3)酸塩基平衡の調節
 私たちの体液は水素イオン濃度(pH)7.4という、ごく薄いアルカリ性に保たれています。これが酸性かアルカリ性、どちらに傾いても細胞は生きられません。腎臓は水素イオンの排出を調整することで、酸とアルカリのバランスを整えています。

 腎臓では150Lもの原尿を生成し、99%を再吸収すると説明しましたが、この方法は非効率なのではと考える人がいるでしょう。しかし、糸球体が一定量しか尿を排せつしないとすると、一定量を上回る水分を摂取した場合、その水分が体内に残り続けてしまいます。こうした水分量のコントロールを、再吸収する仕組みが担っているのです。尿の量や成分のバランスを、再吸収することで調整しやすくしています。

腎機能の異常はさまざまな病気をもたらす

 このほかにも、腎臓はホルモンを分泌して血圧の調整や造血を促す機能も備えます。血圧の調整にはレニンやカリクレインなどのホルモンが関わり、血圧を正常に保とうとします。また、赤血球は骨髄で作られますが、エリスロポエチンというホルモンが働きかけて造血を助けています。さらに腎臓は、小腸でのカルシウム吸収に必要な活性型ビタミンDを作っており、骨の発育にも関わっています。
 このように腎臓は生命維持に欠かせない多様な機能を備えています。そのため、何らかの原因で腎臓の機能が低下すると、全身にさまざまな影響が及びます。例えば、電解質の異常は意識障害や不整脈などの心疾患の原因となります。血液中のpHバランスが崩れると正常な細胞活動が阻害され、呼吸器や循環器、神経障害などを招く恐れもあります。また、腎臓からのホルモン分泌が異常をきたすと、レニンの過剰分泌で高血圧を招いたり、エリスロポエチンの分泌減少で貧血を起こしたりします。活性型ビタミンDが作られないと、骨がもろくなる骨障害(腎性骨症)も起こしやすくなります。
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腎臓病 (1章-2) 腎機能が低下する腎臓病とは?

腎臓病を患うと、腎臓が担うさまざまな機能に障害が生じます。
腎臓が本来の役割を十分に果たせなくなると、透析療法を選択する可能性も高くなります。
ここでは、腎臓病の特徴や、どのように進行していくのかを解説します。

腎臓病の初期は自覚症状が少ない

 腎臓は体内環境を一定の状態に保つため、24時間休まず稼働します。その働きが徐々に機能しなくなるのが腎臓病です。腎臓病になる経緯はさまざまですが、原因が何にせよ腎機能が慢性的に低下すると、最悪の場合、いわゆる腎不全に陥ってしまいます。腎不全とは、腎機能が低下することによって、腎臓が十分に働けなくなった状態をいいます。

腎臓の機能が低下すると腎不全に陥る可能性がある

 腎臓の機能が徐々に低下する状態を腎臓病という。機能低下によって腎臓が本来の働きができなくなった状態を腎不全と呼ぶ。  腎臓は「沈黙の臓器」の1つで、慢性の腎臓病では多くの場合、かなり進行するまで自覚症状が現れません。気がついたら重篤な状態だったというケースは多く、病状の悪化に気づきにくいのが特徴です。また、腎機能が一定レベルまで低下すると、その後に適切な治療を受けたとしても腎機能は回復しません。肝臓は全体の4分の3を切除しても元に戻る再生機能を備えていますが、腎臓は失われた機能を二度と取り戻すことができないのです。
 なお、腎臓病には、急性腎障害や急性糸球体腎炎などの「急性」と付く病気があります。これら急性の腎臓病は、腎機能を悪化させた原因を治療によって取り除くことで回復が見込めます。しかし、その後の体調管理などを怠ると慢性化していく場合があります。

体内に老廃物がたまってさまざまな症状が出現

 腎臓は生命維持に欠かせない臓器であることから、すべての組織がフル稼働せず、ある程度の余力を残して機能しています。例えば、左右の腎臓を合わせて200万個ある、糸球体と尿細管で構成するネフロンは、200万個が常に稼働しているわけではありません。中には休んでいるネフロンも多いのです。事故などで片方の腎臓を失ったとしても、大きな支障なく生活を送れるのはそのためです。
 しかし腎臓病になった場合、余力として休んでいた組織が働くことになり、腎臓の余力自体がなくなって負荷が徐々に蓄積されます。腎機能は低下するものの自覚症状は現れず、気づいたときには手遅れというケースが少なくないのです。
 慢性の腎臓病になると、血液をろ過する糸球体が壊れて減少します。機能する糸球体がある程度減少すると、残った糸球体だけではろ過機能を十分維持できなくなり、倦怠(けんたい)感や頭痛、吐き気、むくみ、高血圧、貧血などのさまざまな症状が現れます。これらは腎臓のろ過機能や調節機能が低下することで、体内に老廃物や余分な水分がたまってしまうのが原因です。例えば、余分な塩分や水分はむくみの原因となるほか、血圧も上昇させてしまいます。
 老廃物とは、タンパク質などが代謝される過程で作られたアンモニアやクレアチニン、尿素や尿酸といった窒素化合物です。尿毒素とも呼ばれ、本来は排せつされるべき有害物質です。しかし、尿毒素が排せつされずに体内を巡ると、上記のようなさまざまな症状が出現し、時には精神や神経に異常をきたすこともあります。このような症状の現れる段階が腎不全です。最近は、後述するように腎障害の原因に関わらず、慢性に進行する腎障害を慢性腎臓病と総称するようになりました。

保存期での治療が大事

 腎不全には保存期と末期の2つの段階があります。保存期とは慢性に経過し、体内に尿毒素や余分な水分が蓄積してさまざまな症状が現れているものの、透析療法を開始していない状態をいいます。この期間に、残存する腎臓の働きを引き下げないように治療することで、透析療法の導入時期を遅らせることができます。主な治療としては、塩分や水分制限による余分な水分の蓄積防止、タンパク質やリン、カリウムの摂取制限などの食事療法、降圧薬による血圧コントロールなどで、出現した症状に応じた薬物治療も行います。
 しかし、さまざまな治療にも関わらず腎不全が進行し、腎臓がほぼ機能しない状態を末期腎不全と呼びます。この時期は生命に危険を及ぼすほどの強い尿毒症状が現れるため、体内に蓄積する老廃物を除去する腎代替療法が必要です。腎代替療法には、対症療法として透析療法が、根治療法として腎臓移植がそれぞれ選択されます。進行具合に応じて生命の危険度は一層増していくことになります。

腎臓病 (1章-3) さまざまな種類がある腎臓病

腎臓病と一口に言っても、
腎臓が悪化する原因や経緯などによってさまざまな種類に分けられます。
病気の種類によっては治療方法や受診する診療科が異なることもあります。
ここでは腎臓病の種類を整理し、代表的な腎臓病について解説します。

急性の腎臓病は腎機能の回復が可能

 腎臓病を診療する診療科は、主に腎臓内科と泌尿器科です。受診する診療科別に腎臓病を分類すると、腎臓内科や小児科で治療するのは糸球体腎炎、糖尿病性腎症などで、泌尿器科で扱うのは腎がんや腎結石などとなります。嚢胞(のうほう)腎や腎盂(じんう)腎炎などのように、診療が両科にまたがるものもあります。
 また、腎臓病は急激に病気が進行する「急性」と、徐々に腎機能が低下する「慢性」に分類できます。前者は急性腎障害と呼ばれ、何らかの原因で短期間に腎機能が低下した状態の総称です。大量の出血や脱水などによるショック状態や、重症感染症、薬剤アレルギーなどが原因で、数日から数週間のうちに急速に進行します。重篤な場合は一時的に透析療法を要することもありますが、適切な治療を施せば、腎機能が回復する可能性があります。一方、慢性の腎臓病は、慢性糸球体腎炎、糖尿病性腎症、腎硬化症、多発性嚢胞腎などが該当します。緩徐に腎臓が機能しなくなる腎不全へと進行する場合もあります。

急性と慢性の腎障害の比較

ほかの病気が原因になる続発性腎臓病

 さらに、腎臓病は腎臓の異常が発生する原因によって、原発性(一次性)と続発性(二次性)に分けられます。
 原発性腎臓病とは、体のほかの部分に異常がなく、腎臓そのものに原因がある場合で、「一次性腎臓病」とも呼ばれます。原発性腎臓病で最も多いのは糸球体腎炎で、一般的には「慢性腎炎」と呼ばれています。そのほか、遺伝的に腎臓が悪くなる病気などもあります。
 続発性腎臓病は、体のほかの部分の異常によって腎臓が障害される病気で、「二次性腎臓病」ともいわれます。糖尿病が原因で発症する糖尿病性腎症、高血圧や動脈硬化が原因で起こる腎硬化症、全身性エリテマトーデスという膠原(こうげん)病に起因するループス腎炎などがあります。

糖尿病や高血圧は大きなリスク

 透析療法の原疾患としてよく挙げられる、(1)慢性糸球体腎炎、(2)糖尿病性腎症、(3)腎硬化症についてもう少し説明しましょう。

 (1)慢性糸球体腎炎
 糸球体の障害に伴って尿の異常や高血圧が続いた場合、慢性糸球体腎炎と診断されます。糸球体の毛細血管を支える組織が増殖して糸球体の機能低下を招くことが多く、毛細血管そのものが障害される場合もあります。障害された場所などによってさまざまな種類に分けられ、慢性糸球体腎炎はそれらの病気の総称として使われています。主な慢性糸球体腎炎には、IgA腎症、巣状糸球体硬化症、膜性腎症、膜性増殖性糸球体腎炎などがあります。
 (2)糖尿病性腎症
 糖尿病の三大合併症の1つです。糖尿病はインスリンの分泌異常などで慢性的に高血糖状態が続く病気で、その状態が続くと特に微小の血管が障害を受けます。中でも糸球体は毛細血管の塊であることから高血糖の影響を受けやすく、ろ過機能をはじめとするさまざまな働きに異常をきたします。すでに糖尿病性腎症が透析導入疾患として、わが国では1位を占めており、重要な社会的な問題となっています。
 (3)腎硬化症
 高血圧や高齢などによる動脈硬化が引き金となる腎臓病です。高血圧による動脈硬化で腎臓の血管が硬くなると、腎臓に流れ込む血液量が減少します。血流を増やそうとして血圧を上げるレニンが分泌されるため、さらに高血圧の悪化を招いて動脈硬化が進むという悪循環に陥ります。腎内の血管の硬化、閉塞(へいそく)が顕著となり、腎機能が失われていきます。高齢化による自然経過での血管硬化もあり、降圧以外に有効な手だてがないことが問題です。

透析導入の半数弱が糖尿病性腎症から

 日本透析医学会の「図説 わが国の慢性透析療法の現況2014年」によると、透析療法導入の原因となる疾患は、1位が糖尿病性腎症(45.3%)、2位が慢性糸球体腎炎(17.8%)、3位が腎硬化症(14.2%)となっています。慢性糸球体腎炎は、学校での検尿の普及や治療の進歩などを背景に透析導入が減少しています。糖尿病性腎症はこれまで、わが国での透析患者増加の主要な原因でしたが、最近の糖尿病治療薬の進歩を背景に、その増加傾向にやや抑制がかかりつつあります。腎硬化症は緩徐ながら増加傾向にあります。
 なお、腎臓病でネフローゼ症候群という言葉をよく聞きますが、これは病名ではなく、症候群と示されるようにさまざまな症状が集まっている病態を指します。何らかの疾患が原因で糸球体のろ過機能が異常をきたし、本来は排せつされないタンパク質がタンパク尿として排せつされるとともに、血液中のタンパク質減少による低タンパク血症、浮腫(むくみ)などが生じます。特に浮腫(むくみ)はネフローゼ症候群の代表的な症状です。

腎臓病 (1章-4) 腎臓病の兆候と初期症状

腎臓は「沈黙の臓器」といわれ、慢性の腎臓病では
かなり進行しないと症状がはっきり現れません。
腎機能の低下とともにさまざまな症状が現れ始めますが、
早い段階で気づくためには定期的な検査が欠かせません。

血尿やタンパク尿は危険信号

 尿の異変は自分で見つけやすい腎臓病のサインです。健康なときの尿の色は薄い黄色で、水分摂取が多いほど無色に近く、脱水状態のときは黄褐色になります。また1日の尿量は1~1.5Lが目安です。日常生活に大きな変化がないにも関わらず、尿の色や排尿量に変化があったら注意が必要です。尿の主な異常は以下の通りです。

 ■血尿
 尿に血液が混じっている状態を「血尿」といいます。出血量が多いと、尿が赤やコーラのような色になります。見た目は普通でも検査して血尿と分かることもあります。腎臓に由来する出血の原因には、糸球体腎炎、腎結石、腎がん、嚢胞(のうほう)腎などがあります。
 なお、尿の色が赤茶色だったとしても血尿とは必ずしも限らず、ミオグロビン尿の場合があります。ミオグロビンは筋肉に含まれる赤い色素で、打撲などで筋肉が損傷を受けると尿中に出てきます。

 ■タンパク尿
 「タンパク尿」とは、尿の中にタンパク質が含まれている状態をいいます。尿の泡立ちがなかなか消えない場合はタンパク尿の可能性があります。糸球体は通常、分子量の大きいタンパク質をほとんど通さず、漏れ出したとしても尿細管で再吸収されます。大量のタンパク質が尿に含まれている場合、糸球体腎炎やネフローゼ症候群が疑われます。

 ■濃尿
 尿に白血球が混じると白っぽく濁ることがあります。これを「濃尿」といいます。腎盂(じんう)腎炎やぼうこう炎などの感染が考えられます。

血尿、タンパク尿、膿尿の比較

 そのほか、頻尿や残尿感が残るといった排尿時の異常も、腎臓や泌尿器の病気を患っている可能性があります。例えば、就寝中に尿意を感じて何度もトイレに行くことを夜間多尿といいますが、50歳前に夜間多尿がある場合は腎臓病が疑われます。尿を正常に濃縮する腎臓の機能低下が原因と考えられます。

足やまぶたのむくみが続いたら注意

 尿の異変とともに、腎臓病の典型的な初期症状として挙げられるのが、足や顔に出るむくみ(浮腫(むくみ)、医学的には「ふしゅ」ともいいます)です。むくみとは、水分が血管やリンパ管などの外に染み出し、皮下組織に貯留している状態で、染み出した部分は膨らんで見えます。腎機能が低下すると塩分や水分を排せつする能力が衰えるため、排せつ能力以上の水分を取ると体内に貯留するようになり、むくみが生じます。
 むくみは、手足や顔、腰、背中などさまざまな部位で発生しますが、中でも足は重力の影響を受けることから最も生じやすい場所です。いつも履いている靴をきつく感じたり、靴下の跡がくっきり残ったりして気づくこともあります。下腿(かたい)のすね(弁慶の泣き所)をよく押してみて、圧痕がすぐに回復しないときに疑います。また、顔のむくみは飲酒や寝不足などで起きますが、特に起床時にまぶたのむくみ症状が毎日のように続くときには注意が必要です。

症状だけで早期発見は困難

 そのほか、腎機能が低下することで現れる症状には以下があります。

 ・疲れやすさや倦怠(けんたい)感、だるい感じが続く
 ・少しの運動で息切れする
 ・貧血や立ちくらみが多くなる
 ・食欲がなく、吐き気がする

 繰り返しになりますが、尿の異変やむくみなどの症状に気づいたときには、腎機能がかなり低下している可能性が高くなります。腎機能が正常時の30%以下になると不快な症状が起きやすくなります。しかし中には、10~20%程度に低下しても自覚症状のない人がいます。腎臓の異変に早期に気づくためには、定期健診で血液検査や尿検査を受けることが重要です。
 尿検査では、尿に試験紙を浸し、試験紙の色の変化でタンパク尿や血尿があるかどうかを調べます。血液検査では主に糸球体ろ過量(GFR)で腎機能の状態を評価します。

腎臓病 (1章-5) 今知っておきたい「慢性腎臓病(CKD)」

慢性の腎臓病にはさまざまな種類がありますが、
どの病気も腎機能の低下という点で共通しています。
先述したように、腎機能がある一定程度低下した患者をひとくくりにし、
早期治療を目的に提唱されたのが、慢性腎臓病(CKD)という疾患概念です。

腎臓病に対する早期の治療介入が目的

 腎臓病はかなり進行した段階でなければ自覚症状が現れません。慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)は、自覚症状が現れる前に腎臓病を発見し、すぐに治療を開始するために「多くの腎臓病が慢性的な経過をたどって徐々に障害されていく」という点に着目し、さまざまな腎臓病を共通の病気として捉え直す目的で作られた新しい概念です。日本には1,330万人がCKDを患っていると推計されており、「新たな国民病」ともいわれています。
 慢性腎臓病が心筋梗塞や脳卒中などの原因になることが明らかになってきたことも、CKDの考え方が提唱されたもう1つの理由です。一昔前は原発性、すなわち腎臓そのものの異常による腎臓病が次第に悪化して腎不全となり、透析治療などの腎代替療法が必要になるという流れが一般的でした。しかし昨今、糖尿病や高血圧などの生活習慣病を原疾患とする腎臓病が増えています。糖尿病や高血圧は全身の血管を障害しますが、腎機能の低下が重なることによって、心筋梗塞や脳卒中の発症率が高まるのです。慢性腎臓病によって透析療法を始めるより前に、心筋梗塞や脳卒中で死亡する人の方が多いというデータもあります。
 このためCKDの治療は腎臓だけにとどまらず、心脳血管障害の根元原因となる生活習慣病なども一緒に治療することに主眼を置いています。それが腎臓の機能低下を遅らせることにもつながると考えられるようになっています。

主に尿とろ過機能の状態で診断

 CKDは具体的にどんな状態を指すのでしょうか。以下の2つのいずれか、または双方が3カ月以上続いているときにCKDと診断されます。

(1)尿検査などで腎臓に明らかな異常が認められる
(2)腎機能が正常値の60%未満に低下している

 (1)の文中にある「異常」とは、主にタンパク尿や血尿を指します。尿検査では「-(陰性)」「±(陽性という濃度ではない)」「+(陽性)」を調べ、「1+以上」(数字が多いほど濃度が高い)になると腎臓に何らかの障害が生じている可能性があります。

尿検査による尿タンパク判定

 ただし腎臓の状態を問わず、激しい運動後や発熱時にタンパク尿が出ることもあります。血尿の場合、腎臓ではなくぼうこうや尿管などの泌尿器からの出血だったり、女性なら月経血が混じったりするケースもあります。いずれにしても再検査が必要です。タンパク尿と血尿がともに陽性の場合は、腎臓に何らかの障害が生じている疑いが高いといえます。
 (2)では、腎機能の指標とされる糸球体ろ過量(GFR)を参照します。糸球体が1分間に何mlの血液をろ過しているのかを示す値を目安にします。ただし、血液検査で血液中に残された老廃物の量を調べれば、腎機能の状態はある程度分かります。そのため、GFRを実測しても構いませんが、血清クレアチニン値から導き出せるGFR(eGFR)を測定するのが一般的です。クレアチニンとは筋肉中のタンパク質が代謝されて作られる老廃物の一種です。糸球体で大半はろ過されますが、腎臓の働きが低下するとろ過しきれず、血清クレアチニン値の値が上昇します。

ステージごとに治療方針を決定

 腎機能の低下を防ぐためには早めの対処が必要ですが、CKDの原因となる病気や予後は多岐にわたります。そのためCKDの治療は、GFRを指標とする5段階のステージに分類し、ステージごとの治療方針が決まっています。腎機能が低下するほどステージが上がります。

 ハイリスク群:GFRが正常に近い状態ではあるものの、糖尿病や高血圧などの生活習慣病を患い、CKDに発展する可能性のある段階を指します。なお、ハイリスク群は5段階のステージに含まれません。
 ステージ1:ハイリスク群と同様にGFRは正常に近い状態です。
 ステージ2: GFRが正常か少し低下している状態です。GFRの低下を招くリスク要因を減らすとともに、CKDの進行を抑えたり、併発する生活習慣病を治療したりします。
 ステージ3:GFRが中等度に低下し、夜間頻尿や血圧上昇などの症状が現れ始めます。定期的な診察により腎機能低下で生じた症状をチェックし、適切な治療へとつなげていきます。なおステージ3はGFRにより3a、3bに分類され、特に3b以降は要注意となります。
 ステージ4:さらに腎機能が低下し、疲れやすくなったり、むくみを生じやすくなったりします。尿毒症の症状が現れるここともあります。透析療法に入る手前のレベルです。
 ステージ5:腎機能の多くを失い、透析療法や腎移植が不可避となります。