腎臓病の合併症
腎臓病(第3章)

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腎機能の低下でカルシウムとリンのバランスが崩れる

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腎臓病 (3章-1) 腎機能障害によって併発する合併症とは?

慢性腎臓病(CKD)は進行すると、腎機能障害に伴ってさまざまな合併症が生じます。
軽度であっても心筋梗塞や脳卒中などの命に関わる病気を発症しかねません。
ここでは、腎臓病の合併症について解説します。

心臓病や脳卒中の発症リスクが倍増

 腎臓は多様な機能を備えているため、腎機能が低下するとさまざまな症状や合併症が現れます。特に慢性腎臓病(CKD)と密接に関係する高血圧や糖尿病は腎臓の血管だけではなく、全身の血管をむしばんでいきます。

腎機能の低下は全身の血管に影響を及ぼす

 慢性腎臓病(CKD)によって、心臓病や脳卒中のリスクが高まる。高血圧や高血糖によって全身の血管にダメージも与えてしまう。  実際にCKDを患っていると、軽度の段階でも心臓病や脳卒中の発症リスクが増し、同年代の健康な人に比べて死亡率が高まることが明らかになっています。したがって、尿毒症状が現れているものの透析療法を行っていない保存期のCKDの治療では、透析療法の導入をできるだけ遅らせることに加え、心筋梗塞や脳卒中などのリスク要因を取り除き、心脳血管障害で死に至らしめないことも重要な目標となります。
 保存期CKDは腎機能の低下によって次のような合併症が起こりやすくなります。最終的には尿毒症の状態に陥り、生命の危険を招くこともあります。

・尿濃縮力障害
・高窒素血症
・水/電解質異常
・代謝性アシドーシス
・腎性貧血
・CKD-MBD(慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常)

 尿濃縮力障害は腎機能低下によって尿を濃縮する能力が衰えることをいいます。症状は、1日に2~3Lも排尿する多尿や、夜中に何回もトイレに行く夜間多尿などの排尿障害が現れます。
 腎臓は通常、体内の水分量に応じて尿を薄くしたり濃くしたりしています。例えば汗をかいて体内の水分量が不足しているときは、余分な水分を出さないよう尿を濃縮します。また、夜間は抗利尿ホルモンが分泌することで、尿を濃縮して尿量を減らしています。しかし、尿濃縮力障害によって尿を濃縮する機能が低下すると尿量の調節が困難となり、夜間でもトイレが近くなるなどの症状が現れます。
 夜間多尿などの症状はCKDの比較的早い段階で現れますが、腎機能の低下がさらに進むと尿量は維持されるものの、負荷された水分、塩分をすぐに排せつできず、水分や塩分は体内に貯留します。その結果、手足や顔に浮腫(むくみ)が生じたり、血圧の上昇が見られたりするようになります。最終的に尿量が減少するのは、透析導入以後となります。

尿毒症の多様な症状の元となる高窒素血症

 CKDの末期となり腎臓の血液ろ過機能が著しく低下すると、尿として排せつできない老廃物が血液中にとどまり、それが全身を巡ってさまざまな症状を引き起こします。食欲不振や吐き気、貧血、乏尿、むくみ、頭痛、倦怠(けんたい)感、口臭、かゆみなどの皮膚症状、胸水や神経障害などが現れます。これらの症状を総称として「尿毒症」といいます。
 尿毒症の状態に陥るとき、クレアチニンや尿素窒素の数値が高値になります。この状態が高窒素血症です。クレアチニンは筋肉中で不要になったタンパク質が分解されて作られる尿毒素で、尿素窒素は食物に含まれるタンパク質が代謝してできた物質を含む尿毒素です。タンパク質などの取りすぎによって血液中の尿素窒素がクレアチニンに比べて高くなると、腎臓の糸球体に負担がかかります。高尿素血症が軽度の場合、症状はあまり現れませんが、進行すると尿毒症のさまざまな症状を引き起こします。症状として最も多く見られるのは、食欲不振や悪心などの消化器症状です。

吐き気や倦怠感は尿毒症の末期症状

 尿毒症のさまざまな症状が明確に現れるのは、腎機能が正常時の10%以下に低下する末期腎不全の段階です。その頃には体液の調節機能や血液のろ過機能が衰えるだけでなく、腎臓からホルモンが正常に分泌されなくなります。造血を促すエリスロポエチンの分泌が低下することで生じる腎性貧血は、比較的早期から見られるものの、この時期になると顕著になります。
 また、腎臓は体内で作られた余分な酸性物質を尿で排出し、体液の酸性とアルカリ性のバランスを一定(pH7.4)に保つようにしています。この調節機能が低下すると、余分な酸を排出できず体液が酸性に傾きます。この状態を代謝性アシドーシスといいます。軽度の場合、無症状ではあるもののカリウム濃度が上昇する高カリウム血症を引き起こします。重度の場合、吐き気や嘔吐(おうと)、倦怠感などが現れますが、これらは尿毒症の末期症状です。なお、ナトリウムやカリウム、リン、カルシウムなど電解質の異常に伴う合併症は後述します。

腎臓病 (3章-2) 注意したい「体液過剰・高カリウム血症」

腎臓はナトリウムやカリウムといった電解質の濃度を調整する役割を果たしています。
濃度のバランスが崩れると、心不全や命に関わる病気を招く恐れがあります。
ここでは、電解質のバランスが崩れたときに起こりうる危険について解説します。

人体の複雑な作用に関わる電解質

 私たちの体は約6割を水分で占め、その中には電解質も含んでいます。電解質とは、水などに溶かしたときに電気伝導性を持つようになる物質のことで、水分に溶けるとマイナスイオンとプラスイオンに分かれます。代表的な電解質はナトリウムですが、そのほかにもカリウム、カルシウム、リンなどがあります。筋肉の収縮や緩和、細胞の浸透圧の調節などといった人体の複雑な作用に関わる物質です。
 腎臓はこの電解質の排せつや再吸収を調節し、体液の量と成分を一定に保つようにしています。その中でも重要なのが、水分とナトリウム(塩分)のバランスです。血液中のナトリウム濃度は、治療などで使われる生理食塩水の濃度と同じ0.9%に保たれています。その濃度が一定になるよう調節しているのが腎臓です。体内の水分が少なくなると尿量を抑え、塩分を多く含んだ尿を排せつします。反対に飲酒などによって体内の水分が増えナトリウム濃度が低下すると、余分な水分を排出しようとしてトイレが近くなります。

腎臓がナトリウム濃度を管理

腎臓は体内の水分を調節するなどして、血液中のナトリウム濃度を0.9%に維持する役割を果たす。

ナトリウム濃度の上昇で高血圧とむくみを招く

 腎臓病によって腎機能が低下すると、水分とナトリウムの調節がうまくできなくなります。食事などで体内に取り込まれたナトリウムは通常、その大半が排せつされます。しかし、ナトリウムが排せつされずに体内に蓄積すると、これに伴って水分が引き込まれるようになります。その結果、ナトリウムの刺激で血管が収縮しやすくなるほか、引き込まれた水分で体液量が増加するため、高血圧を招くことになります。また、増加した水分やナトリウムをうまく排出できないと、体液過剰の状態となって浮腫(むくみ)も生じやすくなります。
 むくみは通常、手足やまぶたに現れますが、余分な体液は胸水として胸腔(きょうこう)内にたまったり、腹腔(ふくくう)内(腹水)、心臓の周囲にむくみ(心嚢液)として現れたりすることもあります。高血圧の状態で内臓にむくみが生じると、「うっ血性心不全」や「肺水腫」になることもあり、多くの場合、呼吸困難を生じます。
 なお、むくみの原因の多くは腎機能障害によるものですが、心臓から血液を送り出す力が低下する心不全の場合でもむくみが生じます。心臓には血液を全身に送り出す左心系と全身からの血液を受け入れる右心系がありますが、左心系の機能が低下すると腎の還流圧が下がって排せつが十分行われなくなり、余分な体液が滞留するようになります。右心系の機能低下は心臓に戻る血流が滞るようになり、余分な体液が各臓器にうっ滞することになります。腎臓病と鑑別するためにも、心不全でむくみが起こる仕組みを理解しておきましょう。

心停止などの命に関わる高カリウム血症

 ナトリウム濃度の上昇によって起こる体液過剰は危険ですが、電解質で最も気をつけなければならないのがカリウムの値です。体内にあるカリウムは主に細胞内に多く含まれ、血液中にはわずかに含まれているのみです。腎臓は細胞内と血液などの細胞外のカリウム濃度を一定に保つ働きをしています。
 しかし、腎臓の電解質の調節機能が低下して血中のカリウム濃度が上昇すると「高カリウム血症」を引き起こし、手や口のしびれ、脱力、味覚異常などの症状が出現します。カリウムの血中濃度はもともと低いため、わずかな調節障害や過剰の負荷であっても変動しやすくなります。体内のカリウムは腎臓から90%が排せつされるため、腎障害時にはカリウム濃度が上昇しやすくなります。
 高カリウム血症による影響は心臓に及ぶこともあります。重症になると「心室細動」という命に関わる不整脈を起こす可能性があり、最悪の場合は心停止に至ることもあります。心室は血液を全身に送り出すところで、心室細動とは心室の細胞が勝手に収縮したり弛緩(しかん)したりする状態をいいます。カリウム濃度を正常に保てなくなると、心筋の動きをコントロールできなくなってしまいます。保存期CKDの状態になると高カリウム血症を起こしやすいため、カリウムの摂取制限が必要となる場合があります。

腎臓病 (3章-3) 電解質のバランスを崩す副甲状腺機能亢進症

腎機能低下によって血中のカルシウムとリンのバランスが崩れやすくなると、
修復しようと二次性の副甲状腺機能亢進症をきたし、繊維性骨炎などを招きます。
発症までのメカニズムを見ていきます。

活性型ビタミンD3欠乏と高リン血症でカルシウム不足に

 リンとカルシウムは人体にとって不可欠な電解質です。リンはカルシウムの働きを促し、多くは骨や歯などの成分となります。しかし、リンとカルシウムのバランスが崩れると、骨がもろくなったり動脈硬化を起こしやすくなったりと、さまざまな悪影響を及ぼします。例えば、リンを過剰に摂取するとカルシウムの吸収を阻害する拮抗(きっこう)作用が起こります。腸管でリンとカルシウムが結合すると水に溶けにくいリン酸カルシウムとなり、腸管で吸収されることなく体外へ排せつされてしまいます。
 このリンとカルシウムのバランスは通常、腎臓が過剰なリンを排せつすることで一定の状態を保っています。加えて腎臓では、腸管からのカルシウム吸収や骨への沈着に欠くことのできない活性型ビタミンD3を合成しています。
 しかし、腎臓が障害を受けて腎機能が低下すると、活性型ビタミンD3の合成が阻害されます。腸管からカルシウムが吸収されにくくなって低カルシウム血症を招きます。

高血圧や高血糖が原因で腎機能は低下

 腎機能が低下すると、骨の形成を促進する「活性型ビタミンD3」の合成が阻害されやすくなってしまう。その結果、腸管からカルシウムを吸収しにくくなり、低カルシウム血症の状態を引き起こす。

 また、腎機能が正常時の20%以下に低下すると排せつ機能が弱まり、リンが体の中にたまりやすくなります。リンが血中で過剰になる状態を高リン血症といいます。高リン血症になると、リンは血中のカルシウムと結合して結晶化するため、血中のカルシウムはさらに減少します。活性型ビタミンD3不足に、リンの排せつ低下による高リン血症が追い打ちをかけることで低カルシウム血症が進行するのです。

CKD-MBDで血管を中心とした石灰化

 カルシウムは骨を作る材料になるだけではなく、全身の筋肉の収縮や血液を凝固する役割も担っています。したがって血中には常に一定のカルシウムが必要となります。しかし、血中のリン濃度が上昇して低カルシウム血症になると、カルシウム濃度を上昇させる副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌が刺激され、骨から溶けたカルシウムが血中に流れ出てきます。これが繰り返すと、副甲状腺の機能が亢進し、過剰にPTHを出し続けるようになります。いわゆる二次性(続発性)副甲状腺機能亢進症をきたした状態となり、骨からのカルシウム流出が続きます。なお、二次性(続発性)とは、副甲状腺そのものが悪くなったわけではなく、他の病気が原因であることを意味します。
 腎性副甲状腺機能亢進症になると、骨から血中にカルシウムが過剰に引き出されてしまうため、骨がもろくなる繊維性骨炎を発症しやすくなります。咳(せき)やくしゃみで肋骨(ろっこつ)が折れるなどの病的骨折の原因になります。また、血中のカルシウム濃度の上昇により、過剰なリンと結びついたカルシウムが石灰化し、さまざまな場所に沈着することで障害をもたらします。石灰化した塊が血管にたまって動脈硬化が進行するのが一例です。現在では、こうしたCKDに由来する一連のカルシウム・リン代謝、骨障害をCKD-MBD(CKD-ミネラル骨病)と総称します。

リンの摂取制限が重要

 リンとカルシウムのバランスが崩れることで、そのほかにも心臓弁膜症や関節炎、アキレス腱(けん)など大腿(だいたい)、膝の腱などの痛み、貧血、神経障害による手足のだるさ、性機能障害などの症状が現れます。
 CKD-MBDの場合、進行した腎障害であれば血中のカルシウムやリン、副甲状腺ホルモンの濃度を測定し、腎機能がかなり低下していればリンの摂取制限も必要となります。食事制限は、カリウムやリンを多く含むタンパク質の摂取量を減らすことが基本です。ただし、食事制限だけでカルシウム不足や貧血を改善するのは難しいことから、薬物療法で補うこともあります。薬物療法では、リン吸着剤や活性型ビタミンD3の内服、あるいは静脈内投与を行います。