腎臓病の予防
腎臓病(第4章)

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たんぱく質の管理が重要、腎機能を維持する食事のポイント

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腎臓病 (4章-1) 普段の生活で実践したい決まり事

慢性腎臓病(CKD)の初期の段階では日常生活を送るのに大きな制約はありません。
無理をしなければ、これまでと変わらない生活を送ることができます。
とはいえ、腎臓への負担となるようなことは避けることが大切です。

生活習慣を改めてCKDの発症・進展を抑制

 CKDとその発症・進行に関わる生活習慣病は、「理想的な生活習慣に変えることで未然に防げる病気」といえます。CKDを発症していたとしてもあしき生活習慣を改めることで、腎機能の低下を防止したり遅らせたりすることが可能です。では、具体的にどんな習慣に改めるべきでしょうか。普段の生活で実践したいことを以下で紹介します。

適度な運動

 CKDの患者の運動不足は、心筋梗塞や脳卒中による死亡リスクを高めるといわれています。適度な運動は腎臓病だけでなく、高血圧や糖尿病、脂質異常症、肥満などの発症や重症化の予防にもつながります。ストレス解消にも有効で、疲れが残らない程度の運動を続けるのが好ましいでしょう。これまで運動を習慣化していない人は、スポーツクラブの会員になるというのも1つの手です。
 「会費を無駄にしない」という思いが、継続の大きな力になるはずです。また、多忙で運動できないという人は、通勤途中に利用しがちなエスカレーターやエレベーターを階段に切り替えたり、近距離なら乗り物を使わず歩いたりといったことを習慣づけることで、運動不足を解消できます。

睡眠を十分に取る

 不眠などの睡眠障害は、生活習慣病や突然死などと強い関連があるといわれています。腎臓病においても睡眠障害のある人は、血液のろ過機能が低下する危険性が高いとの指摘もあります。中でも肥満の人に多い睡眠時無呼吸症候群は、CKDの発症リスクであることが報告されています。良質な睡眠を取るコツは、決まった時間の就寝と起床、さらに布団やベッドは寝ること以外に使わないことです。例えば、寝る前に寝床でスマートフォンなどを見るのを控えます。寝る直前の飲酒も深い眠りを妨げるため控えましょう。

禁煙を実行し過度な飲酒は控える

 喫煙はがんや心筋梗塞、脳卒中など、多くの病気のリスク因子です。健康によくないのは明らかで、腎臓にも当然よくありません。タバコに含まれるニコチンは毛細血管の動脈硬化を進めることから、毛細血管の塊である糸球体は障害されやすく、腎機能の低下を招きます。喫煙者は1日も早く禁煙するようにしましょう。
 一方、飲酒は適量ならば血管を広げ、血流をよくします。肝障害などを患っている場合を除き、腎臓病だけなら適量のアルコール摂取は腎機能低下のリスク因子にならないといわれています。しかし、過度な飲酒は高血圧を招くほか、がんなどのリスク因子にもなります。また、飲みすぎで自制心が働かなくなることで、タンパク質や塩分などを多く含むものを食べすぎてしまうこともあります。「適量を適度に」が腎臓をいたわる飲酒の秘訣(ひけつ)です。

体を適度に温める

 体が冷えていると、病気にかかりやすくなります。血管は体の熱を逃さないため、寒さを感じたら収縮します。収縮すると血流が悪くなり、腎臓の血液ろ過にも影響を及ぼします。また、血圧も上昇することから腎臓に負担をかけるだけでなく、心脳血管障害の発症リスクも高まります。冬場はもとより、夏場であってもエアコンの効きすぎで血流が悪くなることがあります。室内を適温に保つとともに、外出時は冷房対策用の上着などを用意して冷えすぎに注意します。

検査結果をグラフで可視化

 腎臓病や生活習慣病は、発症してもなかなか自覚症状が現れません。生活習慣の改善に取り組んでいたとしても、その成果を実感できず、改善中に以前の生活スタイルに戻ってしまう人は少なくありません。そこで、途中で諦めることなく継続できる工夫を考えておくとよいでしょう。例えば、自宅で測定した血圧や体重の推移をグラフ化し、目の届く場所に貼っておきます。これまでの努力の結果を確認できるようにすることでモチベーションを維持します。なお、血圧は朝と夕方の決まった時間に2回測定しておくとよいでしょう。収縮期、拡張期の平均値をグラフとして書き込みます。体重も1日1回、決まった時間に測定してグラフで可視化しましょう。

日々の結果をグラフにしてモチベーションをアップ

 自宅で測定した体重や血圧の推移をグラフにして壁などに貼っておけば、日々の推移を把握しやすくなる。これまで努力した結果がモチベーションの維持にもつながる。

 すでにCKDを発症し、医療機関を定期的に受診している場合、採血によって分かるGFR値などを、医師に教えてもらって書き込みます。GFR値は検査ごとの値に一喜一憂せず、数年単位で腎機能の低下速度を評価していくことが重要となります。

腎臓病 (4章-2) 腎臓病の予防と進行を遅らせる食生活とは?

慢性腎臓病(CKD)を予防する、
あるいはCKDの進行を遅らせる食事はどんな内容が好ましいでしょうか。
食事の内容は、もともとの原因疾患や腎臓の働き具合によって異なります。
1人ひとりの状態に合わせて食事内容を見直していくことが大切です。

腎臓の機能を維持するための食事

 CKDにおける食事療法の目的は、腎臓の機能を少しでも長く維持することです。そのためには、排せつされない老廃物(尿毒素)が体内に蓄積するのを抑えたり、体内のナトリウム、カリウム、リン、水分などの量や濃度のバランスを保ったりする食事であることが望まれます。食事療法のポイントには、適正エネルギーの摂取、減塩、低タンパク食などがありますが、CKDの場合、進行具合によって重視すべき食事内容は異なります。
 ここではCKDを発症していない人を含めた全ステージで必要な食事療法と、ある程度進行し、保存期CKDにあたるステージ3~4の患者向けの食事療法に分けて説明します。

全ステージで取り組むべき食事内容

 CKDの全ステージで取り組むべき食事療法は、日常生活における「健康を維持するための食生活」にほかなりません。具体的には、適正なエネルギー摂取とバランスのよい栄養摂取を継続し、肥満や高血圧、糖尿病などの腎機能低下を招くリスクを減らしていくことが重要です。
 特に肥満は、それだけで腎機能を低下させるリスクの1つです。高血圧や糖尿病などのほかの生活習慣病の温床にもなります。肥満にならないように摂取カロリーに注意することが重要です。 なお、統計的に最も病気になりにくい健康的な体重は、体格指数(BMI)の値が22といわれています。自分の身長から健康的といわれる体重(標準体重)を導き出すことができます。

身長(m)×身長(m)×22=標準体重 (※身長の単位は「m」です)
 実際の体重が標準体重を大幅に上回っていれば、毎日の食事で摂取するエネルギー量を減らしたり、運動によって消費エネルギーを増やしたりします。体脂肪を減らし、標準体重に近づくように減量します。
 栄養の偏りにも注意が必要です。糖分や脂質を多く取りすぎる食生活は、糖尿病や脂質異常症の原因になります。一方、CKDやその予備群が気をつけたいのは、塩分の過剰摂取です。世界保健機関(WHO)が推奨する塩分摂取量は1日6g未満です。しかし日本人の平均摂取量は1日10g前後(男性11.0g, 女性9.2g)といわれ、全体的に取りすぎる傾向にあります。塩分を摂取しすぎると喉が渇いて水分も多く取るため、体液量が増えて血圧が上昇します。高血圧は腎機能低下の大きなリスクとなることから、塩分を控えて血圧を上昇させない食生活が必要です。

ステージ3~4の患者はタンパク質の管理が重要

 CKDの進行がステージ3程度に移行すると腎臓のろ過機能が低下し、血液中の老廃物を排せつする力が衰えます。食事内容を積極的に見直し、ろ過機能の低下を抑えることが大切です。
 三大栄養素といわれる糖質、脂質、タンパク質のうち、特にタンパク質の摂取量に注意します。タンパク質には窒素が含まれており、タンパク質が体内でエネルギーとして使われると窒素化合物という老廃物が残ります。腎臓には老廃物を排せつする働きがあることから、タンパク質を摂取すればするほど腎臓に負担がかかり、糸球体の障害も進行します。とはいえ、タンパク質は筋肉や内臓、血管を作る必須栄養素であるため、まったく取らないわけにはいきません。
そこでステージ3以降では、残された腎機能で処理できるタンパク質の摂取量を決め、管理するようにします。ステージ3における目標値は、体重1㎏あたり0.8~1.0g、ステージ4では体重1kgあたり0.6~0.8gです。普通の成人が1日に摂取するタンパク質は1.2g前後といわれていることから、ステージ3では2~3割減、ステージ4では4~5割減が目安となります。ただし、体重1kgあたり0.6gではエネルギー不足になりがちで、バランスを保つのがしばしば困難です。医師や管理栄養士と相談の上、進めることが重要です。 ステージごとのタンパク質の摂取量(1日あたり、体重1kgあたり)

 また、高カリウム血症や高リン血症の症状が見られる場合、カリウムやリンの摂取制限も加えなければなりません。カリウムは生の食品に多く含まれているため、ほうれん草などの含有量の多い野菜を食べる場合、細かく刻んでゆでることでカリウムが溶け出るため、摂取量を減らせます。生で食べることの多い果物は、極力控えるのが望ましいでしょう。ただ、カリウムは尿で90%排せつされるため、透析によって無尿の患者以外は、急に上昇するわけではありません。自己判断で食事制限すると毎日の食事に大きな制約を設けてしまうことになります。医師の指示に従って進める方がよいでしょう。
 タンパク質に多く含まれるリンの制限は、まずはタンパク質の摂取制限を守った上で、含有量の多い食品添加物入りの食品を控えるようにします。しかし、小魚などのように、リンとカルシウムの両方を含む食品は少なくありません。リンを制限するとカルシウム不足を招く恐れがあるため、薬物療法が必要なケースもあります。

腎臓病 (4章-3) 腎臓病予防に効果的な運動とは?

慢性腎臓病(CKD)や生活習慣病を予防する上で適度な運動は欠かせません。
CKDになったとしても適度な運動は必要です。
ここでは、腎臓病の発症や進行を予防するのに効果的な運動療法について解説します。

運動不足はCKDの進行を早める

 現代人の多くは運動不足に陥っており、食生活の欧米化と相まって肥満や生活習慣病がまん延する原因となっています。最近の研究では、運動不足は喫煙とほぼ同等の健康リスクがあることが明らかになっています。1日30分ほどでも運動習慣のある人は、そうでない人と比べて平均寿命が数年長くなるというデータもあります。
 CKDを患っている人も同様です。腎臓が悪いと「安静にしていた方がいいのではないか」と考えがちですが、体を動かさないことによる筋力の低下や骨量の減少、血管の老化の方が深刻です。腎機能低下の症状の1つである「疲れやすさ」も筋力低下の影響が大きく、CKDの患者の運動不足は心筋梗塞や脳卒中の死亡リスクを高めるともいわれています。透析療法が必要な末期腎不全の患者でも、適度な運動を取り入れることで体重を減少するなどの改善をできることが分かっています。
 もっとも、息が上がるほどの激しい運動は、急激な血圧上昇や血中のクレアチニンを一時的な増加を招き、腎臓に負担をかけてしまいます。自分にとって無理のない範囲で運動することが大切です。また、高血圧の状態が続いたり、浮腫(むくみ)がひどかったりするとき、もしくは血尿などの自覚症状が現れている場合は、症状が治まるまで安静にします。運動を続けてよいかどうかが分からないときは主治医に相談するとよいでしょう。

CKDの人は中程度の運動を継続的に

 厚生労働省の「健康づくりのための運動指針2006」では、生活習慣病を予防するための身体活動量・運動量、および体力の基準値を示しています。身体活動の強さを表す単位を「メッツ」、身体活動の量を「エクササイズ」とし、具体的な運動内容を例示しています。
 メッツとは、身体活動の強さが安静時の何倍に相当するかを示しており、座って安静にしている状態を1メッツ、普通歩行を3メッツとします。身体活動の量を示すエクササイズは、身体活動の強さ(メッツ)に身体活動の実施時間を掛けたものです。
 1エクササイズに相当する身体活動を示しているのが下の図です。同指針では、健康維持のために必要な身体活動量として、週に23エクササイズ以上の活発な身体活動(運動・生活活動)を定めています。そのうち4エクササイズ以上は活発な運動を行うことを目標としています。

1エクササイズに相当する活発な身体活動

 例えば、通勤などで20分歩いた場合は1日あたり1エクササイズで、週5日歩いたとしても5エクササイズにしかなりません。同指針の基準を満たすためには、少なくとも1日30分程度の軽いジョギングを続ける必要があります。なお、この目標に含まれる活発な身体活動とは3メッツ以上の身体活動で、3メッツ未満となる強度の低い活動は除外されます。
 CKDの患者の場合、身体活動の強さに気をつけます。例えば、ランニングや水泳を7~8分続ける運動(8メッツ)は、健康な人でもきつく感じるケースがあるでしょう。CKDの人の場合、5~6メッツ相当の中程度の運動を続けることで症状改善が認められたという報告があります。自分の運動能力の4~6割程度でできる運動を目安にし、「少し負荷がかかるがまだ続けられる」といった中程度の運動を定期的に続けることが大切です。ステージ4以降でも運動に取り組むことが大切です。

体を動かす趣味を見つける

 運動習慣がこれまでなかった人が「運動しよう」と決意しても、継続するのは難しいでしょう。運動の習慣化をおっくうに感じる人は、生活活動を充実させることから始めるのが一案です。例えば、子供と一緒に15分ほど体を動かしたり、家庭菜園などで庭仕事したりすれば、速足で歩く運動と同じ効果を見込めます。体を動かす趣味であれば習慣化しやすいし、継続しようと意欲も湧いてきます。休みの日は家でごろごろする時間を減らし、体を少しでも動かそうと意識を切り替えてみましょう。