腎臓病の治療
腎臓病(第5章)

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血液透析(HD)と腹膜透析(PD)の違い

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腎臓病 (5章-1) 腎臓を守るための薬物療法

腎臓病は進行するとさまざまな症状が現れるため、薬物療法の内容は1人ひとり異なります。
人によっては何種類もの薬を服用する場合があり、管理も大変です。
代表的な薬の種類や注意すべきポイントなどをまとめます。

腎機能の低下防止や症状改善が主な目的

 腎臓病は生活習慣病との関わりが深いため、治療するにはまず食事や運動などによる生活習慣を改善します。血糖や血圧のコントロール、肥満解消などを中心に取り組むようにします。それでも腎機能の低下を止められない場合、薬を使用することになります。ただし、現在の薬物療法では残念ながら腎臓の機能を取り戻すことができません。保存期CKDの薬物療法の場合、腎機能の悪化を防いだり、進行を遅らせたりする治療が中心となります。
 腎臓病の薬物療法は大きく2つに分かれます。1つは腎臓病の直接の原因となる病気を治療する「原因療法」、もう1つは腎臓病が進行してからの症状改善を目的とする「対症療法」です。

「原因療法」と「対症療法」の目的

 まず腎臓を弱らせている原因をきちんと取り除くことが、腎機能の低下や心筋梗塞、脳卒中の発症を防ぐことにつながります。例えば、慢性腎炎はこれまで難治な病気でしたが、最近はステロイドや免疫抑制剤などを応用することで進行を遅らせたり、治癒させたりできるようになりました。また、糖尿病なら血糖コントロール、高血圧なら血圧コントロールが欠かせません。食事療法や運動療法で改善しなければ薬物療法を開始し、コントロールするための薬を服用します。原因となる病気や生活習慣病の治療薬は、透析療法の導入後も基本的には使い続けることになります。

降圧薬にはタンパク尿を抑える効果も

 高血圧の人はもちろんですが、血圧がそれほど高くない人でもタンパク尿が続く場合は、血圧コントロールが必要です。特に腎臓から分泌するホルモンに起因する血圧上昇を抑制するRA系阻害薬は、タンパク尿を減らす効果が見込めます。RA系阻害薬は、レニン-アンジオテンシン=アルドステロンという体液を保つホルモンシステムを抑制することで降圧を図ります。
 そのほか、降圧薬には、血管を収縮させる作用のあるカルシウムが血管平滑筋に入り込むのを防ぐカルシウム拮抗(きっこう)薬、原尿が通る尿細管でナトリウムを再吸収するのを抑える利尿薬などがあります。高血圧に糖尿病やタンパク尿を合併している場合はRA系阻害薬を選択することが多く、合併していない場合は患者の状態に応じた降圧薬を選択します。

腎機能が低下したら症状改善の薬を追加

 CKDが進行してステージ3を超えると、体にはさまざまな問題が現れます。定期的に実施する血液検査で血液の状態をチェックし、必要に応じて降圧薬などの腎臓を守るための薬を利用します。また、症状の改善を目的とした治療薬を追加することもあります。例えば、体内環境を保つための薬や、貧血や骨代謝異常に対する薬があります。
 そのほか、高リン血症の場合、消化管内でリンと結合して吸収を抑制するリン吸着薬を使用します。利尿薬は尿細管でカリウムの再吸収を抑制するため、高カリウム血症の場合でも使われます。また、やはり腸管でカリウムを吸着する樹脂製剤を用いることもあります。
 赤血球造血刺激因子製剤(ESA)は貧血を治療する治療薬です。腎機能が低下すると腎臓で産生される造血を促すエリスロポエチンの分泌が減少し、貧血を生じやすくなりますが、ESAはエリスロポエチンの代わりとして注射で投与します。骨の代謝異常の場合、活性型ビタミンD不足が原因となるため、活性型ビタミンD製剤で不足を補います。

多剤になった場合の相互作用や飲み忘れに注意

 服用する薬の種類が増えると、それぞれの薬が作用を打ち消し合ったり、薬が効きすぎたりすることがあります。種類が増える場合、検査結果を踏まえて薬の種類や用量を変えるなどの調整を図ることがあります。
 高齢者になると、異なる医療機関で病気ごとの薬を処方されるケースが起こりえます。腎機能が低下すると薬がなかなか排せつされず、血中濃度が高くなりすぎることがあるので注意が必要です。複数の医療機関や医師にかかるときは「お薬手帳」を持参し、主治医に服用している薬をすべて伝えるようにしましょう。
同様の理由で市販薬の安易な利用も危険です。特に注意が必要なものは以下のとおりです。

・非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)…腎内血管を収縮させることで障害性がある
・H2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)…腎排せつ性のものが多く、過剰になる
・マグネシウム製剤…制酸剤、緩下剤として用いられるがマグネシウムの蓄積をきたす

 何種類もの薬を正確に飲み続けるのは大変な作業です。飲み忘れや飲み間違いを防ぐためにも「毎食後」「寝る前」など服用のタイミング別に、服用する薬を小分けにして保管するというのも1つの手です。小分け用の薬ケースは外出時に持ち運びが便利なポーチ式など、さまざまな種類のものが市販されています。

腎臓病 (5章-2) これから透析療法を始めるにあたって

透析療法は、ほぼ働かなくなった腎臓に代わり、
血液中の余分な水分や老廃物を人工的に取り除く治療法です。
透析療法の導入は早すぎても遅すぎてもメリットはないといわれ、
治療を始める適切なタイミングを探ることが大切です。

透析患者のほとんどが血液透析を選択

 腎臓はCKDの進行により、その機能が正常時の15%程度まで低下すると血液を十分にろ過できなくなります。余分な水分や老廃物が体内にたまることで、浮腫(むくみ)や食欲不振、倦怠(けんたい)感、吐き気、貧血などの症状が現れるようになります。このような状態で、尿酸窒素やクレアチニンといった毒素が全身を巡って生じるさまざまな症状を尿毒症といいます。特に腎機能が正常時の5%以下に著しく低下した場合、尿毒症の症状が現れやすくなります。しかし、こうした状態は生命の危機につながるため、力尽きそうな腎臓の働きを代行する腎代替療法が必要となります。その代表が透析療法です。
 透析療法は大きく分けて、主に医療機関で機器を使って血液を浄化する血液透析と、通院せずに自分の腹膜を利用する腹膜透析があります。日本には約30万人の透析患者がいますが、大半が前者の血液透析を選択しています。

液体の濃度差を利用して血液を浄化

 透析療法は腎臓の代わりに血液を浄化する治療法で、老廃物の排せつ、体液や電解質の調節、酸とアルカリのpH調整などを腎臓に代わって行います。
 透析療法の中でも一般的な血液透析は、ダイアライザーと呼ぶ専用の血液透析器を使って行います。腕の血管に針を刺して血液を体外に取り出し、ダイアライザーで血液を循環させて老廃物を除去した後、浄化した血液を体内に戻します。週に2~3回、1回あたり4~5時間かけて行うのが一般的です。

透析療法のイメージ

 腕の血管から血液を取り出し、ダイアライザーを使ってろ過する。老廃物などを取り除いた血液は、体内に戻される。

 ダイアライザーには、血液が流れるストロー状の管があり、管の周りは透析液で満たされています。管は小さい穴が開いた透析膜と呼ぶ半透過性のフィルムでできており、血液と透析液の濃度を一定にしようと作用します。このとき、水分や分子量の小さい物質(ナトリウムやカリウムなどの電解質、尿素やクレアチニンなど)が血液から透析液へ移動することとなります。一方、分子量の大きいタンパク質や赤血球、白血球などは透析膜の小さな穴を通過することなく、血液中にとどまります。こうした仕組みにより血液を浄化し、電解質も調整します。
 血液透析で老廃物を十分取り除くには、1分間に約200~250mlの血液をダイアライザーに送る必要があり、十分な血液量を確保しなければなりません。そのため一般的には、血液透析開始前に腕の動脈と静脈を皮下でつないで血管を太くする(静脈の動脈化)手術を実施し、大量の血液を取り出しやすくします。このように、血液を取り出しやすくした処置を「バスキュラーアクセス」、動静脈を吻合(ふんごう)する手術を「内シャント作製」と呼びます。腕に施術できない場合、足の付け根や鎖骨の下にカテーテルを入れたり、人工血管を用いたりすることもあります。

透析療法の導入は検査値や症状から判断

 慢性腎不全の場合、腎移植を受けない限り透析療法を生涯に亘って続けることになります。そのため、透析療法の開始時期を遅らせたいと考える人は少なくありません。しかし、生命に関わるため、いつまでも先延ばしするわけにもいきません。尿毒症の症状がいくつか現れてから透析を始めても、低下した体力を回復するのに時間がかかり、十分な効果を見込めなくなってしまいます。その一方、腎機能が残っている時期に透析療法を開始しても、寿命を延ばすことにはならないという研究結果もあります。透析療法の適切な開始時期は、血清クレアチニン値などで示される腎臓の状態だけでなく、腎不全で生じるさまざまな臨床症状、日常生活への支障の度合いなどを総合して判断します。
 一般的な目安としては、旧厚生省が1992年に作成した透析導入の適応基準が用いられています。腎機能や臨床症状、日常生活障害程度をスコア化し、合計で一定基準以上になった場合、透析療法の導入がすすめられます。ただし近年は、高齢者の患者や糖尿病性腎症に起因する患者が増加し、適応基準を満たさずとも開始するケースが散見されます。自覚症状がないため透析を拒絶する人がいますが、自己判断せず主治医の意見を聞いて判断するのが望ましいでしょう。

腎臓病 (5章-3) さまざまな透析療法と生活上の注意点

透析療法には血液透析のほかに腹膜透析があります。
利用者はごくわずかですが、在宅で血液透析している人もいます。
通院による血液透析の場合も、工夫次第で通常と変わらない生活を送ることが可能です。
透析開始後の生活とその留意点について解説します。

腹膜透析は自己管理できるかどうかで判断

 透析療法には、自宅や職場でできる腹膜透析と呼ぶ方法があります。腹膜とはおなかの中の臓器を包む膜です。この腹膜で囲われた腹腔(ふくくう)という空間に透析液を入れ、腹膜をフィルターとして使うことで血液を浄化します。
 腹膜表面には毛細血管が網の目状に分布しています。腹腔内に透析液を入れると、腹膜が透析膜の役割を果たし、毛細血管を流れる血液中の老廃物や余分な水分などが透析液へと移動します。透析療法で使われるダイアライザーと同様の仕組みを腹部で行っていることになります。透析液は、老廃物などがたまったら新しい透析液に交換しなければならないため、腹膜透析を行うには、透析液を注入したり排せつしたりするためのカテーテルを腹腔内に入れる手術が必要となります。 腹膜透析の手順は下記の通りです。透析液を出し入れするためのバッグの交換(下記手順の(2)~(5))を、6~8時間ごとに1日3~4回行わなければなりません。1回あたりの交換にかかる時間は約30分です。

腹膜透析の手順
(1)透析液を腹腔内に入れたままにしておく(約6~8時間)
(2)注入用と排せつ用のバッグをつける
(3)たまっていた透析液を排出
(4)新しい透析液を注入
(5)バッグを外す

 限られた時間で一気に血液中の老廃物を処理する血液透析と比べて腹膜透析は、自然な仕組みに近いことから、残っている腎機能を長く保てる利点があります。医療機関への通院も月に1、2回程度で済みます。
 ただし、透析液の入れ替えは本人、もしくは周囲の家族などが管理しなければなりません。また、腹膜が透析膜の代わりとして機能するのは5~8年程度です。その後は血液透析に移行することになります。

自宅で血液透析する試みも

 寝ている間に透析液を交換する自動腹膜透析という方法もあります。「サイクラー」と呼ぶ自動腹膜透析装置に透析液バッグをセットしておくと、事前設定した間隔で透析液の注入・貯留・排せつが自動的に行われます。寝返り程度なら管は外れませんし、残存する腎機能にもよりますが、昼間はバッグを交換せずに済むこともあり、日中の活動制限が大幅になくなるのが利点です。透析液を自分で交換できない子供や高齢者を介助する家族の負担を軽減することもできます。

自動腹膜透析のイメージ

 サイクラーと呼ぶ専用機器を寝床近くに設置し、就寝中に透析液を交換する。透析液を取り換える手間や時間を省くことが可能。

 一方、血液透析を在宅で行う試みも始まっています。医療機関で行う血液透析は、保険制度によって週3回までと決められていますが、自宅ならこうした制限なく、毎日行うことが可能です。体内にたまった老廃物を毎日排せつできるため体への負担はかかりにくくなります。食事制限や水分制限もゆるやかになります。費用は医療保険が適用されるため通院と同程度で、透析装置も医療機関から貸し出されるので購入する必要はありません。
 しかし、透析装置を設置するためには、スペースの確保や水回りの工事が必要になる場合があります。装置の操作や片付けなども本人、もしくは家族が行わなければなりません。緊急時に医療機関へ連絡する介助者も確保するべきでしょう。近隣に在宅で血液透析の実施をサポートする医療機関があることも条件となります。そのため、全国で在宅血液透析を行っている患者は少なく、透析患者全体の0.2%程度といわれています。

タンパク質を取りやすくなるが水分/塩分の摂取制限は厳格化

 透析療法導入後の生活はどう変化するのでしょうか。血液透析の場合、1週間に3回、1回あたり4時間程度の透析を受けなければなりません。また、透析療法は血液のろ過機能を代替しますが、腎臓が備えるほかの機能を補完しません。例えば、レニンやエリスロポエチンなどのホルモン分泌、活性型ビタミンDの生成などの役割は透析療法で代替することはできません。そのため、透析前からの薬物療法を原則として継続したり、新たに追加したりする場合があります。
 一方、透析によって老廃物をある程度除去できるため、タンパク質の制限は体重1㎏につき1日1.0~1.2gと若干緩和します。また、血液透析を始める時間を夕方以降にしたり、寝ている間に体の負担の少ない長時間透析を行ったりする施設もあります。実施しやすい時間帯を選ぶことで社会生活への影響を減らすことができます。ただし、2泊以上の旅行は、出先で透析を行う医療機関を確保しておく必要があります。
 血液透析を開始すると、残っている腎機能をほぼ失われ、尿がほとんど出なくなります。そのため水分と塩分を厳格に制限する必要があり、水分の取りすぎによる「水太り」は避けなければなりません。水分を取りすぎて血管に負担がかかると、心不全や脳卒中の原因になります。
 そのほかにも、血液透析の場合はシャント、腹膜透析の場合はカテーテルを入れる腹部からの感染に気をつけます。体を清潔にし、栄養状態の改善や体液のバランス管理に努めることも大切です。