入院・医療費
腎臓病(第6章)

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長期にわたる腎臓病治療費、透析療法と腎移植

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腎臓病 (6章-1) 腎臓病治療にかかる費用はどれくらい?

慢性腎臓病(CKD)の治療は長期にわたります。腎機能が低下して末期腎不全になった場合、
透析療法か腎移植を受けなければなりません。腎臓病の治療費はいくらかかるのでしょうか。

診療内容に応じて費用は異なる

 腎臓病の治療費と一口にいっても、CKDのステージや進行に伴って現れる症状によって1人ひとり異なります。ここでは、保存期慢性腎不全でかかる一般的な医療費について外来と入院別に概説します。

 (1)外来治療の費用
 CKDの早いステージでは、食事療法と薬物療法を中心とした保存的治療を積極的に取り入れ、腎機能の低下を抑えて透析療法までの期間を延長できるように努めます。そのためには定期的に外来を受診し、診察や検査を受けることが大切です。また、問診や検査結果を踏まえて、新規の薬を追加したり種類や用量を変更したりします。そのため、診察費や検査費、薬代などがその都度必要になります。

 (2)入院治療の費用
 CKDと診断された際、高血圧や浮腫(むくみ)などの何らかの症状や進行度合いによっては、腎臓病に関する正しい知識やセルフケアの方法を習得してもらうために教育入院をすすめられることがあります。入院期間は病院によって2~3日で済むケースがあれば110日前後を要するケースもあります。入院費用は治療費や検査・処置費、薬代、食事代に加え、個室などを希望したら差額のベッド代もかかります。食事代と差額ベッド代は保険が適用されず、自己負担となります。

ステージが進むごとに薬剤費が増加

 定期的に通院治療を続けた場合、費用はどれくらいかかるのでしょうか。ある医療機関が数年前に公表した調査結果によると、CKDのステージ2の場合、1カ月あたりに約2万7,000円でした。この金額は、3割負担と2割負担の人が自己負担として窓口で支払った額の平均値になります。当然、ステージの進行に伴って治療費は高くなり、ステージ3の場合で約3万5,000円、ステージ4の場合で4万5,000円という結果でした。
 この調査ではステージ5を、eGFRの値が11~15ml/min/1.73㎡であればステージ5a、eGFRの値が10ml/min/1.73㎡以下であればステージ5bと分けています。ステージ5aの場合の費用は5万円であるのに対し、ステージ5bの場合は約6万8,000円に跳ね上がっています。

腎臓病のステージ別にみる治療費

 費用の内訳を見ると、診察費や検査費に限るとステージにおける差異はほぼ見られません。一方でステージが上がるにしたがって薬剤費が増えています。さまざまな症状が現れることで、比較的高い赤血球造血刺激因子製剤(ESA)などが使われるようになることが要因の1つと考えられます。
 なお現在は高額療養費制度によって、所得や年齢に応じて窓口で支払う自己負担の限度額(上限額)が定められています。限度額を超えた窓口負担額は払い戻されるので、加入する医療保険に確認しておくとよいでしょう。

腎移植は医療保険で賄われる

 末期腎不全になると透析療法や腎移植といった腎代替療法が必要になります。透析療法にかかる医療費は、通院で週3回ほど血液透析を行った場合、1カ月あたり約40万円かかります。自宅で行う腹膜透析の場合は35万~70万円と幅があります。ただし、これらの額は透析療法にかかる医療費の総額で、実際に支払う費用は公的な助成制度によって大幅に軽減されます。
 腎移植の場合、献腎移植、生体腎移植ともに移植を受ける人(レシピエント)の手術代を含めた医療費は医療保険の適応となります。また、生体腎移植における腎臓の提供者(ドナー)の医療費もレシピエントの保険で賄われます。自己負担額は医療費総額の1~3割となりますが、この自己負担額についても自立支援医療や都道府県が行っている重度心身障害者医療費助成制度を利用すれば負担を軽減できます。医療機関の医療ソーシャルワーカー(MSW)や地方自治体の担当窓口などに事前にたずねてみるとよいでしょう。

腎臓病 (6章-2) 透析治療にかかる医療費は?

透析治療は1人あたり月に40万円ほどかかる高額な治療法です。
さらにこの治療を生涯続けていかなければなりません。
透析治療に関する医療費を分析するとともに、負担の軽減策について解説します。

透析医療にかかる医療費総額は1兆3,000万円?

 透析治療は一般的に高額といわれていますが、何にどれだけの費用がかかっているのでしょうか。ここでは血液透析を週3回、仕事帰りの夜に受けている人を想定し、医療機関が保険者や患者から受け取る診療報酬の明細をもとに調べてみることにします。診療報酬は点数で示されますが、1点あたり10円となります。

 ・再診料              72点    720円(透析1回あたり)
 ・人工腎臓            2,175点   21,750円(透析1回あたり)
 (4時間以上5時間未満の場合)
 ・夜間休日加算           300点 3,000円(透析1回あたり)
 (夕方5時以降の施行で算定可)
 ・透析水質加算2          20点 200円(透析1回あたり)
 ・ダイアライザーほか              4000円(透析1回あたり)
 ・慢性維持透析患者外来医学管理料 2,250点   22,500円(月1回)

 透析1回あたりの診療報酬を合計すると2万9,670円です。週3回で月12回の合計は35万6,040円で、さらにここに月1回算定される医学管理料などを加えると37万9,540円となります。およそ40万かかりますが、これは他の高額医療、例えば分子標的薬による抗がん剤治療などと比べて並外れて高いというわけではありません。
 しかし、透析治療は腎移植を受けない限り、生涯続けていかなければいけない治療です。年間にすると1人あたり400万~500万円、10年で4,000万~5,000万円もかかります。さらに現在、透析患者数は約32万人を数えています。日本における透析医療費は、年間の費用を1人400万円で計算した場合、約1兆3,000億円となります。なお、平成26年の国民医療費の概況(厚生労働省)によると、糸球体疾患、腎尿細管間質性疾患および腎不全の医療費は1兆5,346億円となっています。

各種助成制度で透析の治療代はほぼ免除

 透析療法を受ける患者数は今後、高齢化とともに増え続けていくことが見込まれます。そのため透析医療費が増加し、日本の医療保険財政がひっ迫されるのではないかと危惧されています。慢性腎臓病(CKD)という概念が広く受け入れられた背景には、CKDの早い段階で腎機能の低下を食い止め、透析導入数の減少、ひいては医療費の削減につなげたいという関係者の願いもあるのです。
 一方、年間400万~500万円の医療費は患者にとって大変な重荷です。その自己負担額は、3割負担の場合で120~150万円です。実際には年齢・所得に応じて自己負担限度額を定めた高額療養費制度によって減額されますが、負担が軽減されるとはいえ限度額相当を生涯にわたって支払い続けるのは大きな負担となります。そこで、腎不全患者で透析療法を行っている人に対して、公的な医療助成・社会保障制度の充実が図られています。例えば、特定疾病療養受領証や身体障害者手帳などの交付を受けることで、毎月の自己負担を1~2万円、あるいは実質無料にすることができます。

治療費を減額する制度の活用を

 特定疾病療養受領証や身体障害者手帳を公布されると、治療費を減額、あるいは実質的には無料にすることができる。

 また、週3回の通院に伴う交通費も積もり積もれば大きな出費となります。しかし透析を行っている患者の場合、公共の交通機関などを割引料金で利用することができます。経済的に安心して治療を受けられるように、さまざまな制度で手厚い措置を講じているのです。

海外で透析を行った場合も一部還付

 旅行先や海外などで透析を受けた場合の医療費はどうなるのでしょうか。国内への出張や旅行などで現地の医療機関で透析を受けた場合、健康保険証と特定疾病療養受領書を提示することで、1医療機関につき1~2万円の自己負担となります。自治体の重度障害者医療費助成制度を利用している場合、支払った自己負担について後日、市区町村の窓口で払い戻しの手続きができます。
 渡航先で透析医療を受ける場合、現地で全額をいったん支払います。帰国後、居住地の市区町村や保険組合に申請することにより、支払った医療費の一部が還付されることがあります。現地での透析記録を保管しておくようにしましょう。

腎臓病 (6章-3) 腎臓病を克服する腎移植とは?

腎移植は、ほぼ機能しなくなった腎臓の働きを取り戻す唯一といっていい治療法です。
腎移植には生体腎移植と献腎移植の2通りがあり、
前者は健康な人から、後者は亡くなった人から腎臓の提供を受けます。

透析療法に比べて圧倒的に少ない腎移植

 腎臓の働きが著しく低下したときに必要な腎代替療法は、日本の場合は大半が透析療法です。しかし、健康な腎臓を提供してもらう腎移植を受ければ、透析療法を受けずに済むようになります。
 ただし、腎移植に踏み切る人は透析療法を行う人に比べて非常に少なく、2012年の腎移植数は約1,600人にすぎません。これは同時期に透析療法を開始した人数のわずか4%です。一方、米国では年間1万7,000人の人が腎移植を受けており、人口比を加味すると日本の約4倍に相当します。

日本と米国の腎移植者数の比較

 しかし、症例が少ないとはいえ日本の腎移植の技術は世界でもトップクラスといわれています。提供された腎臓が5年後も機能する5年生着率は、生体腎移植で9割以上、献腎移植でも約8割となっています。免疫抑制剤も進歩し、血液型や白血球の型が合わなくても移植自体は可能となっています。また、夫婦間移植や透析導入前に移植をしてしまうこと(先行的腎移植)も可能となり選択肢が広がってきています。
 なお、腎移植の手術には医療保険が適用されます。自己負担についてもさまざまな助成制度を利用できるので、高額な費用を理由に受けられない治療では必ずしもありません。とはいえ、「腎臓を提供する人」がいて成り立つ治療であることから、恩恵を受けられる人は限られます。

免疫抑制剤は必要だがほぼ普通の生活が可能

 腎移植で提供された腎臓がきちんと機能すれば、これに勝る治療法はないといっていいでしょう。血液透析における時間的な制約を免れるだけでなく、生活上の制限もほぼなくなります。例えば、タンパク質、カリウム、リンなどの摂取制限がないほか、水分制限も不要です。もちろん、提供された腎臓に負担をかけないため、塩分やカロリーの取りすぎには注意しますが、細かな管理が不要なことから精神的なストレスも減らせます。
 ただし、移植後は免疫抑制剤を飲み続けていかなければなりません。腎移植で提供された腎臓は他の人の腎臓ですので、移植すると異物として排除しようとする反応が起こります。こうした拒絶反応を防ぐために投与されるのが免疫抑制剤です。異物を排除する免疫の働きを抑える薬で、服用中は感染症にかかりやすくなります。普段のうがいや手洗いなどの感染対策が大切です。また、移植後に新しい腎臓が機能しなくなることもあります。この場合は透析療法に戻ることを検討しなければなりません。
 治療面におけるデメリットは、腎臓を提供する人(ドナー)が必要となるため、誰でも腎移植を受けられるわけではありません。日本はドナー登録者が少なく、希望通りに腎移植を受けられる確率は少ないのが現状です。仮に腎臓の提供を受けられるとしても、患者が腎臓病以外に重篤な疾患を併発していたり、移植手術に耐えられる体力がなかったりすると手術の適用外となります。

腎摘出したドナーの腎機能は7割まで回復

 生体腎移植は、親子や兄弟姉妹などの血縁者や配偶者から、2つある腎臓の片方の腎臓を提供してもらうのが一般的です。ドナーとなる親族は、6親等以内の血族、配偶者、3親等以内の姻族が対象で、全身性の感染症やがんなどを罹患(りかん)していないことが条件となります。以前は血縁者間の生体腎移植が主流でしたが、免疫抑制剤の発達で配偶者間の移植が増加し、現在はほぼ同じ割合になっています。腎摘出によってドナーの腎機能は半減することになりますが、残存する腎臓の機能が徐々に向上することによって提供前の70~75%まで回復します。またドナーの腎摘出手術に伴う死亡率はほぼ0%ですが、提供後に肥満や高血圧になりやすいことが分かってきており、長期に亘る定期的な通院治療が必要です。
 腎臓を患者に提供するための献腎移植は、脳死や心停止した人が対象で、生前に臓器提供の意思表示をしている場合、もしくは家族の同意があった場合に臓器が提供されるようになります。献腎移植を希望する人は日本臓器移植ネットワークに登録する必要があります。
 移植前には拒絶反応の軽減を図るため、ドナーと腎臓の提供を受ける患者(レシピエント)の血液型やHLA(ヒト白血球型抗原)が適合するかどうかを検査します。なお、血液型は不適合であっても移植することができます。HLAの型も献腎移植では適合度の高い組み合わせを優先しますが、生体腎移植の場合は適合しなくても行われます。ただし、腎臓提供者が複数いる場合は、適合度の高い人の腎臓を選択します。